学級委員
「学級委員長は長月君。副委員長は高井さんに決まりました」
恭一のクラスの担任である三浦先生から発表された。
クラスの投票で選出され、教室の前に恭一と高井鈴華が並んだ。
「1年、よろしくお願いします」
と恭一は簡単に挨拶をした。
高井鈴華もそつなく挨拶をして席に着いた。
恭一は、中学の頃から学級委員長、部活では部長をしてきた。『選ばれたからには、しっかり務めよう』と強く責任は感じているが、表面上は飄々としている。
恭一は「物怖じしない」「堂々としている」「何を考えているか分からない」とよく言われてきた。自分でも、感情を出すのは苦手だと自覚している。
「僕も恭一君に投票したんだ。学級委員、頑張って」
休み時間、麻人が恭一に話してきた。
「麻人は図書委員だな。お前らしいな」
「本は好きだからね」
恭一は、麻人のほんわかした雰囲気は人を和ませるし羨ましいと思っている。前世の妻、アサも明るく朗らかな人だった。けれど、麻人が生まれ変わりかどうかは疑わしいと思っている。
「長月君、三浦先生が呼んでるわ」
副委員長の高井鈴華に声をかけられ、一緒に職員室へ向かった。
「長月君、小野田君と仲がいいのね。中学は違うのに」
廊下を歩きながら高井鈴華に言われた。
恭一は、家が近いからと詳しくは話さなかった。
恭一と高井鈴華は中学が同じった。クラスが違っていたので話すのは初めてだ。高井鈴華は、確かバレーボール部だったかなと恭一はあいまいにしか覚えていない。
職員室に行くと部活紹介の冊子を先生から渡され、クラスに配るように言われた。午後は各部活の説明会があるようだ。
1年生は体育館に集合し、部活紹介を聞いた。運動部、文化部と先輩達が壇上で演説している。
それぞれの部活の説明が終わり、教室に戻ることになった。
「恭一君は、どの部活にするか決めた?」
「俺は剣道部だな。麻人は?」
「僕は美術部に興味あるな。絵を描くの得意なんだ」
恭一は、アサも手先が器用だったなと何故か思い起こした。麻人とアサを重ねてしまっていることに、恭一は自分でどうかしているなとフッと笑った。
放課後、教室に上級生が恭一を訪ねてきた。
「こんにちは。城島先輩」
「長月、元気だったか? もちろん剣道部に入るよな」
「はい。そのつもりです」
城島建吾は恭一の中学の1つ上の先輩で、同じ剣道部だった。この高校は剣道はなかなの強豪校なので、入部すると練習に気合が入るなと今から楽しみであるが、大変だろうと覚悟している。
廊下で先輩との話を終え、教室に入ると鞄を抱えた麻人がいた。
「大丈夫だった? 恭一君」
「え? 何が?」
「怖そうな上級生だったからさ」
「剣道部の先輩だ。ガタイがいいからな。迫力はあるな」
恭一は心配そうな顔の麻人を見て、少し可笑しくなり笑ってしまった。
恭一と麻人は一緒に帰った。今日も、麻人は恭一の家に来るようだ。
「おかえりなさい!」
恭一の自宅に戻ると、悠がビハクを膝の上に乗せ撫でていた。
「悠、来てたんだね」
麻人が悠に近づき、ビハクの頭を撫でている。
「それはそうと、恭一様。大変なのです。兄なのですが……」
悠が恭一にコソコソ話をしてきた。