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二人の思い

『何だよ。恭一君、にやにやしてさ』

 縁側でビハクを撫でながら、麻人の心は穏やかではなかった。みんなが恭一を囲み、楽しそうに笑っている。恭一もまた、はにかみながら笑っている。

 恭一が喜んでいる姿を見ると、麻人は嬉しく思う。けれど、何かすっきりしない。恭一の凛々しい姿は、今も昔も変わららず惹きつけられる。知り合ったばかりの景山も、恭一をカッコイイと言っていた。

 

 学校でも、疎外感を味わうことがあった。先日、クラスメイトの森下とお互いの部活の話で盛り上がっていた。恭一も森下も、運動部で二人ともスポーツが得意だ。麻人は、あまり運動が得意ではない。一緒にスポーツを楽しめたらいいけれど、自分と一緒だとつまらないかもしれない。

 恭一と肩を並べて、一緒に進んでいきたい。けれど、恭一の邪魔をしてはいけないと、つい遠慮してしまう。こんな不甲斐ない自分が、もどかしい。


「僕は情けないね」

 麻人は、ビハクを撫でながら溜め息をついた。そんな麻人を慰めようとしているのだろうか。ビハクは、麻人にぴったりと体をくっ付けている。

「ビハクは、今も昔も優しいね」

 麻人は、微笑みながら言った。前世でも、悲しい時はいつも猫が寄り添ってくれた。あの時の猫の魂が、ビハクに宿っているような気がしている。



「麻人、どうしたんだ? ビハクは麻人のことが好きだよな」

 後ろから恭一に声をかけられ、麻人とビハクは振り向いた。ビハクは麻人の顔を見上げ、さっと走っていった。ビハクは、悠の膝の上に乗り目をつぶっている。


「恭一君、景山君にカッコイイと言われて嬉しそうだったね」

「なんだ、聞いていたんだ」

 恭一は、縁側に座る麻人の横に腰掛けた。二人は庭を眺めながら、しばらく黙っていた。


「俺は、カッコよくなんかないよ。面白くないし」

「え?」

 麻人は、恭一がぼそっと語った言葉がおかしくて吹き出した。

「恭一君は、カッコイイって」

「お前も、面白がって……」

「ごめん、本当だよ」

 恭一がむすっと拗ねた顔をしているのが面白くて、麻人はまた笑ってしまった。


「俺は、麻人の方がカッコイイと思ってる」

「え? 僕が?」

「ああ。周りの人が自然と笑顔になるし、みんな寄っていくんだ」

「そうなのかな? ぼーっとしてるよ、僕は」

 麻人は、苦笑いしながら恭一の方を見た。恭一は、前を向いたまま真剣な顔をしている。その顔を見て、恭一の本心だと分かった。


「麻人がいてくれて、本当に良かった」

「えっと……こちらこそ、ありがとう」

「俺は、愛想がないしな。麻人のような明るさが羨ましいよ」

「ちょっと、やめてよ恥ずかしいよ」

 麻人は、改めて恭一に言われると嬉しいけれど、照れくさかった。恭一も照れているのか、フッと笑った。



「恭一も麻人君も、こっちに来てケーキ食べましょうよ」

 彩音に呼ばれ、二人はお互いの顔を見て、一緒に立ち上がった。

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