新しい客人
「景山君、ご家族の方は仕事か何かなの?」
「いえ、そういう訳では……」
「あ、ごめんなさい。初対面なのに、私ったら」
彩音が申し訳なさそうにしていた。緊張しているのか、景山は背筋を伸ばし固くなっている。
麻人や悠が初めて来た時も、端の方に座り緊張していた。恭一は、その時のことを思い出し、懐かしいなと感じていた。
十六畳ほどある茶の間は、畳の部屋に掘り炬燵があり、くつろげる空間だ。恭一達家族はもちろん、お客をもてなしたり、みなが集まる場所である。
母親が用意してくれたお菓子を食べながら、奈穂と悠は楽し気に会話している。学校での出来事や、好きなアーティストの話題で盛り上がっているようだ。
麻人は、縁側でビハクを撫でながら、のんびりしている。ビハクは、麻人が来るといつも側に寄っていく。ビハクにとって、麻人は居心地がいいようだ。
「景山君のフルート、すごく良い音でビックリしたわ。ねぇ、恭一」
「うん。聞いていて、落ち着くって感じかな」
「だから寝そうになったのね」
彩音が、笑いながら恭一に言った。
「恭一は不愛想だし、こんな感じでしょ。最初、怖かったんじゃない?」
彩音が景山に聞くと、彼は困ったような顔をして、恭一の方を向いた。
「怖がらせてしまったなら、ごめん」
恭一は、頭を少し下げた。恭一は、自分でも愛想がないことは自覚している。その点、麻人はいつもにこやかで見習わなければとは思っている。
「いえ。僕が、小野田さんを付け回していたし」
「景山君、もういいって。私、全く怒ってないから」
悠が景山に言うと、彼は口元がほころんだ。
「恭一さんは、ちょっと怖かったけど、男らしくて……カッコイイです」
「恭一、聞いた? 良かったじゃない。カッコイイんだって」
驚いた後、少し照れた恭一を見て、彩音がにやにや笑っている。
「そうよ! 恭君はカッコイイものね」
奈穂も、にやにやしている。
「景山君。恭一様が剣道をしている姿なんて、すごくカッコイイよ」
悠は、彩音と奈穂とは違い、真面目な顔で訴えている。恭一は、からかわれている時より、妙に恥ずかしくなった。
「そうなんですね。恭一様の剣道、見てみたいです」
その景山の言葉に、みんなが笑った。
「あのさ、景山君。恭一様って呼ぶのやめてくれる? この際だから言うけど、悠も様って呼び方はどうかと思う」
そのやり取りを見ながら、彩音と奈穂は大笑いしている。
「そうよね。『恭一様』は、ちょとね。恭一さんでいいと思う。ね、恭一」
「そうだな。それでいいと思う」
彩音の意見に、恭一も賛同した。
「わかりました」
悠と景山は、お互いの顔を見ながら返答した。
恭一は、ふと麻人の方を見た。いつもなら、みんなと一緒に笑顔で会話に入ってくるはずなのに、今日は知らん振りである。どうしたのだろうかと、気にかかった。




