花火
恭一と麻人は、バーベキューをしているみんなの所に戻った。
「恭一、早く肉食べろよぉ」
「そうだ、無くなるぞぉ」
父親と祖父は上機嫌のようだ。いつも以上に声が大きい。二人とも、すっかり酔っぱらっている。見慣れた光景だが、恭一はくすっと笑ってしまった。
「恭一、何していたの?」
「希水に食べ物を持って行っていた」
ほんのりと頬が赤くなっている彩音が、恭一のそばに来た。彩音は、それほどお酒が強くないようだ。母親に似たのだろう。祖父や父親のような酒飲みにはならないだろうと、恭一は安心している。
「私も、あとで希水君の所に行こっと」
「希水も、こっちに来れたらいいんだけど」
「そうよね」
恭一と彩音は、少しの間ぼんやりとしていた。視線の先で、悠と奈穂が美味しそうにアイスクリームを食べている。
「悠ちゃんが笑っている姿、本当に癒される」
「そうだな。今も昔も変わらない。ほっとするよ」
「恭一、麻人君や悠ちゃんに出会ってから、なんか変わったね」
「そうなのかな?」
「雰囲気が柔らかくなったもの。オーラの色も、澄んだ色になってるよ」
「オーラか……俺にはよく分からない事だけど、良い事なのかな」
「ええ。心が穏やかなんだと思う」
彩音の言う通り、恭一は以前よりも気持ちが楽になっていると感じていた。家族や友人はいるけれど、ふと孤独に思うことがあった。けれど、今は違う。麻人と悠に出会ってから、とても落ち着いた気持ちでいられる。それと同時に、以前よりも家族の有難さを感じるようになった。
「ねぇ、花火しようよ! 去年買ったままのがあるのよ」
彩音が、みんなに向かって言った。
「わぁ、やりたい! 悠ちゃんも花火したいよね」
奈穂が、2個目のアイスクリームを食べようとしている悠に言った。
「うん。花火したいです」
「悠、あまり食べすぎたらお腹壊すよ。アイスはもうやめなよ」
麻人が悠に注意すると、悠はアイスクリームを食べるのをやめた。悠のしゅんとしている姿を見て、祖父と父親が爆笑している。
「麻人の言う通り、アイスや冷たい物ばかり食べたらダメだぞ」
恭一も悠に注意すると、麻人がくすくす笑いだした。
「何だか、こういう場面、昔もあった気がするよ」
「あったな。よく叱っていたな」
恭一は、前世の悠を思い出していた。雄吉は、よく食べ、よく飲み、よく動き、とても元気が良かった。そのくせ、案外お腹が弱いところがあり、そのたびに医者から薬を貰っていた。薬と言っても、今で言う漢方薬のようなものだった。薬草のような物を、妻のアサは煎じて飲ましていた。そして、温かい飲み物を与え、お粥を作って食べさせていた。
「お腹壊したら、また苦い薬を飲ますよ」
「それはイヤー」
笑いながら言う麻人に、悠は少し涙目だ。その様子を見ながら、恭一は大笑いした。
彩音が、部屋から花火を持って来た。それぞれ、手に花火を持ち、花火の先をロウソクの炎に近付けた。
夜空に、色とりどりの明るい火花が輝いている。彩音も奈穂も悠も、きゃあきゃあと騒いでいる。
恭一と麻人は、二人並んで線香花火を持っている。
「今日は、ありがとう。とっても楽しいよ。悠も、あんなに喜んでる」
「俺も楽しいよ……また、バーベキューや花火しような」
「うん」
恭一と麻人は、静かに小さな光を眺めていた。




