打ち上げ会
恭一が玄関のドアを開けると、姉の彩音が部屋から出てきた。
「ただいま」
「おかえり。麻人君、悠ちゃん、いらっしゃい」
恭一達は、居間に入ると母親と叔母の昇子が椅子に座り話していた。
「恭一、おかえり。決勝戦、残念だったわね」
母親は、普段と変わらない様子だった。
「なかなか良い試合だったわ。恭君、次期エース候補ね」
「まだまだです」
恭一は、昇子なりに励ましてくれているのだと思った。
「ねぇ、恭一。見て、あの木の枝」
彩音が耳元で小さな声で言い、指を差した。枝に一羽のカラスがいて、こちらを見ている。
「あ!」
恭一が驚いた顔をしている横で、彩音がくすくす笑っている。
「希水君も、試合を見てたんだって。『さすが恭一、カッコイイ』と言ってたわ」
「そうなんだ」
恭一は、嬉しく思ったが、照れくさくて上手く言葉にできなかった。
「麻人君も悠ちゃんも、晩ご飯食べていくでしょ?」
いつものごとく、彩音が2人を誘っていた。
「いいのかな……」
麻人は遠慮がちだったが、悠は嬉しそうな表情をしている。
「昇子さんが、たくさんお肉を持ってきてくれたのよ。みんなで食べる方が、バーベキューは楽しいわ」
恭一の母親も、麻人と悠に笑顔で声をかけていた。
「お肉! ありがとうございます!」
目を輝かせ、元気よく言う悠が可愛らしく、みんなが笑い出した。
隣の家から祖父もやってきて、新鮮な野菜をカゴいっぱいに入れて持っている。
「お爺さん、この野菜も畑で採れたの?」
カゴを覗きこむ悠に、
「そうだぞ。このトマトは、悠ちゃんが植えたやつだ」
「すごーい」
びっくりしている悠を見て、祖父は満足そうだった。
庭にバーベキューのコンロを設置したり、簡易机や椅子を運んだり、麻人と悠は率先して動いている。恭一も手伝おうとすると、
「恭一君は、着替えてゆっくりしていて」
「そうです。恭一様は、休憩してください」
麻人と悠が、恭一を阻止してくる。
それほど疲れていないんだが……と恭一は内心思っていたが、部屋へ着替えに行くことにした。
恭一が部屋に入ると、ベランダにカラスがいるので窓を開けた。
「希水か。試合、見てくれたんだな」
「うん。窓の隙間から見てた。緊張したよ」
「お前が緊張してたの?」
「だって、大事な決戦だし。カッコ良かった」
「ありがとな」
恭一は、カラスの頭を軽く撫でた。すると、ビハクが恭一の足元にすり寄ってきた。少し機嫌が悪そうに見える。
「どうした、ビハク。拗ねているのか?」
ビハクの顎を撫でながら、
「今日はバーベキューだから、お前の分も焼いてあげるからな」
「僕も!」
希水が羽をバタバタさせて、恭一に訴えてきた。
「分かった、分かった」
恭一は、笑いながら希水に言った。
「恭一! 何してるの?」
「今行く」
彩音に大きな声で呼ばれた。
「希水、後でな」
恭一はビハクを抱き上げ、1階に降りて行くことにした。




