特別な人達
恭一は、麻人の言葉が頭から離れなかった。悠と2人で『コソコソしてズルい』と言ったこと。恭一が微笑んでいる写真を見て、『今も昔も変わらない』と言ったこと。
普通なら、気にするほどの発言ではないのかもしれない。けれど、麻人はただの友人ではない。前世の妻の生まれ変わりなのだ。来世でも出会いたいと、強く願った相手だ。男同士ではあるが、特別な存在である。麻人の笑顔や優しい声は、恭一にとって心が落ち着き、穏やかになる。もし、麻人が女性とし生まれていれば、恋愛感情が湧いていたに違いない。
恭一は、校門の前で大きく深呼吸した。麻人は、もう教室にいるだろうかと気にしながらクラスに入った。
「おはよう、長月君。昨日は楽しかった」
「あ、おはよう」
土屋琴子が、明るい声で恭一に話しかけてきた。
「ビハクちゃん、可愛かったな。また行っていい?」
「ああ、いつでも」
「やった」
嬉しそうに話す土屋琴子に、クラスの女子が興味を示し彼女に事情を聞いている。その内容を聞き、
「私も見に行きたい」「俺も」
と男女ともクラスメイト達が盛り上がっている。
「ビハク、すごい人気だね」
麻人が話しかけてきた。
「あ……」
麻人の笑顔があまりにも眩しく感じ、恭一は言葉が出てこず、口を開けたままの状態になった。
「恭一君、どうしたの? ぽかんとして」
麻人がくすくす笑うので、恭一は少し恥ずかしくなった。
「いや、何でもない」
恭一は気を取り直し、席に着いた。
「長月! 県大会で次は決勝なんだろ」
クラスの森下蓮が、恭一に興奮気味で言いにきた。
「お陰様で。森下は?」
「俺の部は敗退した」
「そっか、残念だったな」
森下蓮は、バスケットボール部でとても背が高い。上から話してくると威圧感があるが、明るく人懐っこいタイプである。
「お前、決勝に出るんだろ? 一年なのにスゴイな」
「いや、そんな……」
「すごーい! 試合、見に行くね。鈴ちゃんも行こうよ」
「うん。長月君は、中学の頃から強かったものね。頑張って」
「俺も行くわ」
土屋琴子と高井鈴華と森下蓮とで、剣道の県大会決勝戦に来るようだ。
「僕も応援に行くからね。悠も誘うよ」
麻人が言うと、
「悠ちゃん来るの? 奈穂ちゃんも来るかな?」
土屋琴子が、ワクワクしている様子だ。
「琴ちゃん、大きな声での応援はダメよ。試合に集中できないからね」
「そうなの?」
高井鈴華が、土屋琴子に試合中の声援のマナーを教えている。
剣道の試合は、とても緊張感があり静寂の中で行われる。静かに見守り、試合後に大きな拍手が送られるのが一般的だ。高井鈴華は、よく心得ているなと恭一は感心していた。
恭一は、中学の頃も剣道は強かったが、一年生の自分が団体戦の選手として選ばれるとは、正直思ってはいなかった。上級生のやっかみは多少はあるだろう。けれど、集中して自分の使命を果たそうと思っている。
それに、麻人と悠が応援に来てくれる。二人に恥ずかしい姿を見せたくないと思った。表情には出ていないが、恭一は気合が入り背筋が伸びていた。




