猫を囲んで
「高井さん、土屋さん、こんにちは!」
玄関に向かった恭一の後ろから、麻人が2人に声をかけた。
「こんにちは」
いつも、きりっとしている高井鈴華が、にこやかに挨拶をした。
「さっき、神社に行ってきたの。清々しい気分よ」
「それは良かった」
土屋琴子の言葉に、恭一はぎこちなく答えた。
「まぁ、入って」
「お邪魔します」
恭一は、クラスメイト達を部屋に通した。そこには、悠と奈穂とビハクがいる。
「わぁ、この猫ちゃんね。可愛い!」
土屋琴子が小走りでビハクに近付こうとすると、ビハクは怯えたように、悠の後ろに隠れた。
「大きな声を出すから、猫ちゃんが怖がってるじゃない」
「あっ、ごめんなさい」
高井鈴華が注意をすると、土屋琴子が両手を合わせて謝った。
「猫は、上から急に触ろうとすると驚くから、そっと顎のあたりから撫でてあげて」
麻人が、しゃがんでビハクの顎を優しく撫でてみせた。土屋琴子が、「可愛い」と両手で口を押えながら小声で言い、目を輝かせている。
土屋琴子と高井鈴華も、麻人を囲みビハクを撫でだした。
「良かったな、ビハク。みんなに可愛がってもらって」
そう言う恭一の横には、奈穂と悠がいる。
「ビハク、すごく喜んでいますね」
悠が恭一の方を見ると、固い表情をした奈穂が恭一の袖を掴んでいた。
「ところで、こちらは誰なの?」
高井鈴華が恭一に向かい、聞いてきた。
「この子は、俺の従妹の奈穂ちゃん」
「その横の子は、僕の妹の悠だよ。よろしくね」
恭一と麻人が、それぞれ紹介した。
「奈穂ちゃん、悠ちゃんね。よろしくね。私は、クラスメイトの高井鈴華。で、この子は……」
「土屋琴子です。琴ちゃんって呼んでね」
「琴ちゃん……」
悠が、はっとした顔をしながら小さな声で言った。恭一は、悠の驚いたような姿を見て、少し気掛かりになった。
前世の恭一には、息子と娘がいた。娘の名前が琴であった……
前世では、恭一の子供達と悠は本当の兄妹のようだった。きっと、色んな思いが込み上げてきたのだろう。そんな悠の心情に気付いたのだろうか。
「悠、このお菓子を貰ったら? 美味しそうだよ」
麻人が、悠に優しい表情で声をかけた。テーブルの上には、恭一の母親が準備したクッキーやスナック菓子などが置いてある。
「わぁ、美味しそう。このクッキーは?」
「母さんが、昨日の晩に作った物だ」
笑顔になった悠に、恭一が答えた。麻人も、微笑んでいる。
「飲み物を取ってくる」
と言った恭一に、
「手伝います」
と悠が後ろに付いてきた。2人で台所に入り、お互い前世の事を思い出していた。




