同級生たち
恭一は、朝からそわそわしている。今日は、同級生の高井鈴華と土屋琴子が遊びに来るからだ。2人は、『幸運を呼ぶ白い猫』ビハクを見に来るのだ。もちろん、麻人も呼んでいる。
「恭一。お母さん出掛けるから、テーブルにお菓子を置いていくわね。飲み物は冷蔵庫にあるから」
「分かった」
母親は、恭一に声をかけると外出した。今日は、合唱クラブの集まりがあるようだった。母親の加奈は、近所の合唱クラブのメンバーで、定期的に練習に行っている。恭一は歌が苦手なので、合唱なんて考えただけでゾっとする。
父親の栄一も、地声が良く歌が上手い。それに、祝詞を奏上する声は、本当に耳に心地よい。跡取りである恭一は、少々音痴なので危機感を抱いている。どうすれば、音程というものが分かるのか理解できない。
恭一は、勉強や運動は得意な方で頑張れるが、芸術面は才能がないと諦めている。けれど、幼少の頃から書道を習っていて、美しい字を書く。
小学生の頃、『長月君は、伸び伸びと美しい字を書く』と先生によく褒められていた。
そろそろ、クラスメイトがビハクを見に来る時間だ。それなのに、肝心のビハクが見当たらない。そのうち、ふらっと戻ってくるだろうかと思っていると、
「恭くーん。遊びに来たわよ」
と従妹の奈穂がビハクを抱きかかえ、居間に入ってきた。
「奈穂ちゃんか。急に来て、どうしたんだ?」
「今日は、悠ちゃんが来るって言ってたから」
奈穂が家に入ろうとしたところ、ビハクが後ろから近付いてきたようだった。庭でウロウロしていたのだろうか。恭一は、ビハクが戻ってきてホッとした。わざわざ、クラスメイトがビハクを見に来るのに、いないとガッカリするだろう。奈穂は、ビハクを猫用ソファにそっと置き、頭を撫でている。
「恭くん。この子、SNSで有名みたいよね。幸運の白い猫なんだって」
「そのようだな。今日は、クラスメイトが見に来るんだ」
「うん。悠ちゃんから聞いて、知ってる」
幸運の白い猫。確かに、ビハクのお陰で麻人や悠と出会えた訳だし、間違っていないかもなと恭一は思った。
ドアフォンの鳴る音がし、恭一が出迎えに行くと、麻人と悠が玄関に立っていた。
「こんにちは。恭一君」
麻人は、いつも通りの笑顔である。その後ろに、少しモジモジした悠がいた。
「悠も、よく来たな。奈穂ちゃんが待ってるぞ」
「高井さんと土屋さんは、神社にお参りしてから来るみたいだよ」
「そうか。まぁ、入ってくれ」
恭一は、麻人と悠と共に居間に入ると、奈穂がビハクと猫じゃらしで遊んでいた。
「奈穂ちゃん、こんにちは。ビハク、嬉しそうだね」
「あ……こんにちは!」
くすくす笑っている麻人に、奈穂が顔を赤らめている。そういえば、今日の奈穂はいつもより可愛らしい服を着ている気がすると、恭一は感じた。普段から綺麗にしていると思うが、どちらかというとカジュアルな服装が多いと思う。今日は、小さな水玉柄のふんわりしたイメージのワンピースだ。麻人がいるしなと、恭一は1人納得していた。
「奈穂ちゃん。今日の服、可愛い」
さっそく、悠が褒めている。奈穂と悠が、ビハクを囲み楽しそうに会話をしている。そんな2人を見て、恭一は自然と頬が緩んだ。そんな時、玄関の方で、
「こんにちは!」
と、女の子達の声がした。




