神社の白い猫
恭一と麻人が教室に入ると、クラスメイトの女子がかけ寄ってきた。
「この神社、長月君の所よね?」
「そうだけど……」
土屋琴子がスマートフォンの画面を見せてきた。
「最近、すごく話題よ。神社でこの白い猫ちゃんを見たら、幸せが訪れるってね」
「それ、知ってる。私もSNS見たわよ」
副委員長の高井鈴華も寄ってきて、画面を覗きこんでいる。賽銭箱がある拝殿前の階段で、白い猫が座っている画像だ。
「わぁ、ビハクだ。可愛い」
麻人も一緒に画面を見ている。
「ビハク?」
女子2人が一緒に声を合わせた。
「その猫の名前」
麻人が小さな声で言った。
「こいつが拾った猫でさ。名付け親だよな」
「うん」
恭一が彼女達に説明すると、麻人は少し照れたような顔をした。
「可愛い名前。今度、見に行っていい? 神社にいるの?」
土屋琴子が恭一と麻人を見上げた。
「今は、うちのペットだからさ。いつも家で寝そべってるわ」
「嘘! 今度、行く行く。鈴ちゃんも行こうよ」
「そうね、いいわよ」
「鈴ちゃんは、長月君の神社に行ったことあるの?」
「あるわよ。長月君とは中学が同じだったから。家が近いからね」
「高井さんと土屋さんが行く時、僕も行こうかな」
「ほんとに? 是非。楽しみ」
土屋琴子が嬉しそうに答えた。
女子2人と麻人が盛り上がっている横で、恭一は少し戸惑っていた。家にクラスメイトの女子が遊びに来ることなど、今までなかったからだ。
「恭一君、ビハクが話題になってるって知らなかったよね」
「そうだな。俺はSNSを見ないからなぁ」
「悠にも教えてあげないと」
麻人は早速SNSを検索し、恭一に写真を見せては『可愛い』を連発している。そんな麻人を見て、恭一は少し笑った。
「どうして笑ってるの?」
「何か、可愛らしいなと思って」
「ビハクが?」
「いや、麻人がさ」
「ちょっとー、何だよ」
怒りながら少し頬が赤くなっている麻人を見て、恭一はまた笑ってしまった。少し拗ねてしまった麻人のことは気になったが、恭一は話を続けた。
「それはそうと、今晩予定がなかったら家に来ないか?」
「予定はないけど、どうして?」
「希水が、また俺の家に来るような気がするんだ」
「そっか。行くよ」
麻人は機嫌がなおったようで、嬉しそうに答えた。
恭一と麻人は、部活が終わった後に待ち合わせをし、一緒に帰る約束をした。
恭一は、麻人が今晩来ることを、母親に伝えないといけないと思った。悠も、誘った方がいいだろうかとも考えた。
恭一は部活が終わり、携帯を見ると麻人から連絡が入っていた。校門で待っているようで、急いで向かった。
「ごめん、お待たせ」
「ううん。希水に会えるかな? 緊張してきた」
「何だよ、それ」
恭一は、そわそわしている麻人を見て、笑っていた。




