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前世での思い

 麻人は特に問題がなく、すぐに病院を出ることができた。

 学校で、明るい表情の麻人を見ることができ、恭一は安堵している。


 おデコにバンドエイドを貼っている麻人に対し、

「どうしたの?」

 とクラスメイト達が心配してくる。そのたびに、

「自転車から転んでね」

 と麻人は照れ笑いをしながら答えている。


「麻人、頭が痛いとかないか?」

「恭一君は心配性だね。大丈夫だよ。昔と変わらず優しいね」

 と麻人はニヤリと茶化してくる。ギョッとした顔の恭一を見て、麻人はクスクスと笑っている。恭一もまた、麻人は昔と変わらず無邪気な奴だなと思ったが黙っていた。


 恭一は、悠から前世の記憶があると聞かされた時は驚いたが嬉しかった。自分と同じ時を生きた者が側にいる。当時の思い出を共有できる。

 麻人もまた、前世の記憶を取り戻した。麻人に対しても驚いたが、嬉しいという気持ちより気恥ずかしさが先にたった。前世で愛した女性であり、来世でも出会いたいと強く願っていた。もし、麻人が女性として生まれていたら、違った思いが込み上げるのだろうか?


「頭で考えても仕方がないな。よく分からない」

 恭一は、溜息をついた。


「どうしたの? 溜息なんかついて」

 麻人が心配そうに聞いてきた。


「実はさ。アサとは来世でも出会いたいと願っていたんだ。お前、男だしな」

 恭一は何げなく言ってしまったものの、恥ずかしくなり顔が熱くなった。麻人も少し頬が赤くなっている。


「僕はね。恭一君と同じ男同士で生まれて、とっても嬉しいんだ。しかも今はクラスメイトだよ。長い時間、一緒だよ」

 麻人はニコニコしている。


「そうだな。また出会えたのは嬉しいよ」

 恭一も、男同士ではあるが再会できたことに感謝した。


「ところで、悠とは昔の話などするのか?」

「ほぼ話さないね。僕と悠は、生まれた時から兄妹だしね。今は兄妹としての思いが強いよ」

「それもそうだな」


 前世のことを引きずっているのは、自分だけなのかもしれないと恭一は反省した。


「でもさ、悠は恭一君への思いは強いと思うよ。悠は、今も昔も恭一君のことが大好きなんだ」

「え? そうなのか。俺も悠は好きだぞ」

「そう。悠、喜ぶよ」


「日曜は希水に会えるの、楽しみだな」

「希水君は会いたがっていたからな。何か話でもあるのかな」

「僕は、色々と話したいよ」


 恭一と麻人が話していると、

「何の話? 楽しそうね」 

 クラスメイトの高井鈴華が声をかけてきた。


「いつもムスっとした長月君だけど、小野田君と話している時は笑顔だもん。ねっ、琴ちゃん」

「うん。小野田君と話している時、長月君ってすごく可愛い顔してる」

 ニヤリとした顔でクラスメイトの土屋琴子(つちやことこ)が話してきた。それを聞いた麻人も、女子達と一緒に笑っている。

 恭一は、どう答えたらいいのか分からず気まずさはあったが、心は穏やかだった。

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