滝の妖精
恭一と彩音と悠は、ビハクに導かれるかのごとく後を付いて行った。暫く歩くと、目の前に川が流れている。静かな水の音と澄み切った空気に心が落ち着く。そして、岩場から流れる水しぶきが太陽の光に照らされ、とても美しく神秘的である。
「姉さん。こんな所に滝があったの知ってた?」
「知らなかったわ。悠ちゃんが前世で見た滝なのかな?」
「どうなのかな? よく覚えていないけど、前世で見た滝も綺麗でした」
恭一達は、暫く滝を眺めていた。
「あっ!」
彩音が急に声をあげ、指を差した。
「あそこに男の子がいる。ビハクも見えるよね?」
彩音とビハクが滝の方に近づいて行き、恭一と悠も付いていった。
彩音によると、滝の下の岩に翼のある男の子が座っているそうだ。
「天狗の男の子だわ。アサさんが言っていた子かな」
もちろん、恭一にも悠にも見えない。
「私も姿を見てみたい」
悠が、彩音とビハクの方を向いて言った。悠がビハクに近付き頭を撫でると
「嘘? 見える」
悠が、驚いて恭一の方を向いた。
「ビハクに触れると、天狗の男の子が見えるのかもしれない」
悠の言葉に、恭一もビハクの背中に手を置いてみた。
「本当だ。翼のある男の子だ。妖精?」
イメージする天狗とは違い、恭一にはとても可愛らしい男の子に見えた。
男の子は、こちらを向いてニッコリ微笑んでいる。
「今日は、アサはいないの? こないだは一緒にいたよね」
「アサ? もしかして麻人のことだろうか?」
恭一がボソッとつぶやくと、ビハクが男の子の目をじっと見ている。
男の子もビハクを見て、頷いているような素振りをしている。
「あの子はアサじゃないんだ。でも、またあの子に会いたいな」
男の子は残念そうにしているが、麻人にまた会いたいと言っている。
「あなた、お名前は何ていうの?」
彩音が聞くと、
「僕の名前はキスイ」
「キスイ。素敵な名前ね。どんな字なのかな?」
すると、男の子が地面に指で字を記した。
希水……
「とても綺麗な名前です」
悠が、希水に言うと、
「ありがとう。君は雄吉だよね。アサとここに来たのを覚えてるよ」
「え? はい。前世は雄吉でした」
悠は驚いている。
「ねぇ、希水くん。あなたは、この辺りを守っているの?」
彩音が優しい眼差しで尋ねた。
「うん。僕はこの川と滝が好きで、ずっといるんだ」
「とても綺麗で神聖な所だわ。希水くんのお陰ね」
彩音と希水が楽しそうに会話をしているところ、悠の携帯電話が鳴った。
「お兄ちゃんが……」
「どうした、悠」
「大変です、恭一様。お兄ちゃんが事故にあったみたいで……」
「なに? 麻人が」
麻人が事故にあい、母親の勤める病院に運ばれたようだった。
「希水くん、また来るわね」
彩音が希水に声をかけ、恭一達は急いで病院に行くことにした。
(挿絵は生成AIで制作しました)




