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小野田家

 麻人と悠は、自宅で母親の帰りを待っていた。今日は早朝から、恭一の祖父の畑を手伝ったり、お昼に美味しいお弁当を食べたり、ショッピングモールで買い物をしたり充実した1日だった。

 

「ただいま」

 母親が仕事から帰ってきた。麻人と悠は夕食をすませてきたので、母親は簡単にうどんでも食べるようだ。


「お母さん! 悠と一緒に買った母の日のプレゼント」

 麻人が母親の早希(さき)にリボンの付いた紙袋を手渡した。すぐに早希はプレゼントを開封した。

「わぁ、可愛い! ありがとう」

 日傘を開き、とても嬉しそうな顔をしている。そして、早希の好きなチョコレートケーキも買ってあり、冷蔵庫から取り出し食卓に出した。


「お金、どうしたの?」

 早希が心配そうに聞いてきた。麻人は恭一の祖父の畑を手伝ってお金を貰ったことや、恭一が夕飯を奢ってくれたことなど、事細かに説明した。


「長月さんには、本当にお世話になっているわね」

 早希は申し訳なさそうな顔をしていたが、ほっとしたような穏やかな笑顔になった。


 

 悠は、母親の喜んだ顔を見て幸せな気分になった。悠もまた、恭一をはじめ長月家の人々に出会えたことに深く感謝している。

 

 母1人で子供2人を育てることは、本当に大変だろうと思う。看護師のため、夜勤から帰ってきた時の疲れた姿を見ると、いつも心苦しく思う。そんな母親が、楽しそうに笑っていると心が落ち着き安心する。優しい麻人も、同じように思っているだろう。


 ちょうど1年前。悠は階段から滑って頭を打ち、一瞬気絶したものの気付いた時には前世の記憶があったのだ。何が起きたのか分からず驚くしかなった。特に生活に支障はないものの、心は動揺しどうしたらいいか戸惑うだけだった。その頃は両親の離婚が重なり、麻人や母親には多感な思春期であり悩んでいるのだろうと心配されていた。


 すっきりしない日々を過ごし1年がたった頃、思いがけず恭一と出会った。恭一もまた前世の記憶があり、しかも前世では尊敬すべき恩人だったのだ。悠は、本当に嬉しかった。

 しかし、兄の麻人が前世の恭一の妻の生まれ変わりかもしれない。そうであれば、麻人は前世の記憶がない方がいいのだろうと思った。


 今日、山林で祠を発見した時の麻人の顔が、とても気になった。麻人に前世の記憶が無いにしても、何か感じるところがあったのかもしれない。悠自身も、祠のことをすっかり忘れていた。


 悠は、前世の自分を思い起こした。

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