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友人の相談

 恭一は、部活が終わり自宅に向かっていた。中学は剣道部に所属していたので慣れていたつもりだが、高校の剣道部はなかなか大変だった。強豪校で練習が厳しい。いつもなら真っすぐ家に帰るが、今日は違う。学校で、麻人に相談したいことがあると言われ、麻人の家の近くの公園で待ち合わせすることにした。


「恭一君! お疲れ!」

「悪い。待ったか?」

「さっき来たところ。これ」

「ありがとう」

 麻人がペットボトルの麦茶を恭一に渡した。恭一は喉が渇いていたので一気飲みすると、麻人がニコニコ顔で恭一を見ていた。


「ところで、相談って?」

「もうすぐ、母の日だよね。恭一君は、どうするの?」

「俺か? 特には考えてなかった」


 麻人は、看護師をしながら兄妹を育ててくれている母親に感謝の気持ちを伝えたいらしい。恭一は、麻人の両親が1年前に離婚したことを思い出した。理由が少し気になったが、聞くべきではないと思い遠慮した。悠と一緒にお金をかけずにできることがないか考えあぐねているそうだ。食事の用意や掃除や洗濯や買い物など、家事の手伝いだけでも喜ぶのではと提案してみたが、麻人と悠は普段しているようだった。


「2人とも本当に優しいな」

 恭一は、率直な意見を言った。すると、

「恭一君の方が、ずっと優しいよ」

「え? 俺が?」

「恭一君はビハクを預かってくれたし。悠にも優しいよ」


 ちょうど1年程前、悠が急に物思いにふけったようにボンヤリすることが増えたそうだ。階段から滑って頭を打ったり、両親が離婚したり悠なりに辛かったのだろうと麻人は語った。けれど、恭一に出会ってから悠は以前のように元気になり、よく笑うようになったと言うのだ。


「恭一君。本当にありがとう」

「いや。俺は何も」


 悠は1年前から前世の記憶が戻ったと言っていた。1人で悩んでいたのだろうと恭一は胸中を察した。恭一の方こそ、麻人や愁と出会えたことに感謝しているくらいだった。そして、ふと祖父の陽一が畑を手伝ってほしいと言っていたことを思い出した。バイトでも雇いたいと言っていたし、手伝えば小遣いくらいは渡すだろうと思った。


「次の日曜、予定はあるだろうか?」

「何もないよ」

「爺さんの畑の手伝いをしてもらえないだろうか? 良ければ悠と一緒に」

「僕は大丈夫だよ。悠にも聞いてみるよ」


 その日の夜、麻人から連絡がきた。悠も畑の手伝いをしたいとヤル気満々らしい。恭一は、さっそく隣の祖父の家に行き、麻人と悠が日曜に畑に行ってくれることを伝えた。

「そうか。そうか」

 陽一は大喜びだった。そして張り切って物置に行き、軍手や帽子や長靴などゴソゴソと取り出していた。

「恭一も、もちろん参加だからな」

「え? も、もちろんだ」

 

しまったことを発案したと、恭一は少しだけ後悔した。

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