project:024 九重 九單
project:024 九重 九單
いつもと同じ帰り道を、いつもとは違う状態で歩く。
手に持っているのはそこのスーパーで買った食材達だ。あいつらきっと、こんな時間でも自分で食べ物用意しないだろうし、帰ったら何か作らなきゃいけねえ。
どこにでもありそうなアパートの、階段を登ってすぐの部屋。ここが俺達の家。
叫ぶような声が中から聞こえる。ドアを開けると、その声はもっと鮮明になった。
「おっっっしゃあ!ビクトリーィ!一昨日来やがれざーこ!」
…………こいつは創場主理意外だと良く言われるが、この家の主人だ。俺は居候ってやつ。
「おーおかえりーくだーん…腹減ったー」
「お前こいつの世話してんのか……?ちゃんとご飯食べさせないとダメだぞ」
「わかってるって。なーポチ〜」
飼い犬のポチと顔を見合わせて、こっちにいる子には見向きもしない。
ここにいるのは名前年齢性別不詳の赤子だ。ちょっと語弊があるから情報を足すが、名前に関してはわからないので「クロ」と呼んでいる。黒髪に大きな黒い目が特徴的だからだ。基本何でも食べる。はちみつでも、スイカでも。だから体は赤子なのであって中身は違うものなんだろう。
なぜかこのクロを主理は毛嫌いしている。見た目が怖いのは認めるが、食いっぷりもいいし、何でも食ってくれるし、見ていて気分がいい。小さいことも相まって守りたくなるんだが、あいつにとってはそんなことないものなのか。
晩飯用の野菜を切り刻み、米を研ぎながら、窓から見える景色を見た。
ついさっき見たあの禍々しい気配はなく、ただ澄んだ夜の空が雲を掴んで流れていく。
「なあ九單ー飯まだー??早く早くー」
コイツはいつもそうだ。グータラしてダラダラして…
「今作ってるから茶の準備でもして待ってろ」
軽くあしらいつつ、手元を見る。傷跡が多く残る皮の分厚い手が、茹でられたやわい卵を持っている。
慣れたように、優しい手つきで。
俺も変わったもんだ。いや、変えさせられたかな。
俺は懐かしむように目の前にいる2人と1匹を見た。
九重 九單••••ここのえ くだん。性別・男、身長・181センチ、体重・69キロ、血液型・β型。隻眼の不死身。これでも昔よりは丸くなった、かな?




