project:022 琉流唯恵
project:022 琉流唯恵
「皆さん、今回は本討伐作戦に参加いただきありがとうございます。本作戦では昨日発生したペデナメコ、それに共鳴し発芽したウロボウシの討伐•発生調査を行います」
世界連合 琉流唯恵支部魔獣対策課に集まった面々は、歴戦の猛者を感じされるほど、身体の傷があり、各々の武器も年季を感じさせる。
「……おい、……おい!そこの兄ちゃん」
隣にいた狼の獣人が九單に耳打ちする。九單はその声を把握しつつ、目だけで返事をした。
「あんたヒョロガリだがよお、そんなんで琉流唯恵に来て大丈夫かよ、他の地区と違ってここは危険度の桁がちげえんだぞ」
「……あんたも、適正ランクは知ってるだろ?おれにはこの2級依頼を受けるだけの実力がある。俺のことより自分の心配しな。何があるのかわかんねえのが琉流唯恵だ」
面食らったように獣人の男は目を開いた後、鼻を鳴らしまた前を向いた。
琉流唯恵は、他の地区よりも魔獣の出没数とその脅威度が高い。土地の形状により、この場所に魔素――魔力の元になるもの――が溜まりやすく、それにより魔獣たちが活性化していると思われる。
故に、この地区での依頼は危険度が他とは頭ひとつ抜けているのだが、その分報酬も高く、ハイリスクハイリターンの場として人気なのだ。
「では!作戦をお伝えいたします。本作戦では、α班とβ班に分かれ行動します。α班は、あらかじめ工作課が用意しているトラップまで魔獣たちを一定数駆除しながら引き連れます。作戦予定地に入ると同時にトラップを発動させますので、β班はトラップを発動するまで、工作課の護衛についていただきます。」
「……それで、目標魔獣がトラップにかかった後、全員でそれを叩く…と」
「俺はα班に行くぜ!そっちの方が断然報酬が良さそうだ」
先程の獣人が吠える。良くも悪くも、この級の人達は血気盛んな者が多い。誰も彼も危険のある方へ、報酬の高い方へと手を挙げる者が多い中、九單はβ班に行くことを決めた。
「……ここからでも魔獣が見えるな……今回の討伐、一筋縄じゃあいかないぞ」
「準備し始めろ!ここも安全ってわけじゃない!」
九單はひとり、魔獣を見据えていた。他にも、β班の班員はいるのだが、皆楽な仕事をしたいという理由で残ったものばかり。
そうでなければ、死ぬのが怖い者が大半だ。
時々来る小さな胞子状の魔獣を切り裂いて、向こうに微かに見える、今回の討伐対象を見ていた。
――――――大きい。
「……こちら目標地点…何があった!?おい!……なに!?戦線崩壊!?」
誰もがその報告に振り向く。皆焦りの表情を浮かべていた。
「くっ……!β班!聞いての通りだ!α班は失敗した!これから予定より強大で多数の魔獣が現れる!α班も追いつき次第攻撃を続けるとのことだが……、とにかく、まだトラップを発動するのに準備が足りない!時間を稼いでくれ!」
琉流唯恵••••るるいえ。強い魔獣が多く棲む。昔から魔獣の狂気化がひどく、人も住み着けない。




