project:020 煉獄
project:020 煉獄
「…………で、最近どうだ?」
「どうって…………別に変わりはないよ」
こいつ………なんかあったくせに……
こいつ――鬼灯 艾无華の脈を測りながら、当の本人を睨みつける。艾无華は目を逸らしながら話も逸らす。
「それで、ハッカ。今の研究はどんな感じなの」
「お前に心配されるまでもなく順調だわ」
奴の魂胆はわかってる。自分のことを話したくないんだろう。なので私の方から話を打ち切る。
「お前は、相も変わらず不安定だな、異能力は精神に左右されるんだぞ」
「わかってるよ…………」
こいつの異能力、「煉獄」。普通の炎よりも粘性を持った、消えにくい炎を生み出す。
「煉獄」は5段階の威力に分かれる。順番に、「赤炎」「青炎」「白炎」「黒炎」そして「赫炎」。
能力者の精神状態によってその力を大きく変える。だからこそ、強大な力を操るには安定した精神が必要なんだが…
こいつは何よりも、自分の異能力を嫌っている。
「わかってるよ……私がちゃんとしないといけないことぐらい……」
今日は異能の検査とカウンセリングを兼ねた精神状況の調査なのだが、ここ最近とても不安定で、私は危惧しているんだが、奴にとってはいつものことのようで、自嘲するくらいの余力は残っているらしい。
「じゃ、次はあれ燃やしてみようぜ」
艾无華が用意した粗大ゴミたちに近づき、手をかざす。奴の手のひらから火がちらつく。その後一瞬で炎が燃え上がると、ゴミの塊たちは音を立てながら黒く小さくなっていく。
こいつ、自分じゃあわかっていないんだろうが、脳波を見ればわかる。
こいつは異能を嫌ってはいるが、何かを燃やす行為を「好ましい」と感じている。
この状態は危ない。いつか暴発すれば、深層心理にある感情が爆発して、何もかもを燃やしかねない。
奴の真面目さがかえってそれを抑えて入るのだが……それも時間の問題だと思う。
「燃やしたけど、これでどうなんの?」
振り返る奴の目は、ひどく疲れ切ってはいるが、……似ている。あいつの――艾无華の生み出す炎の揺らめきに。
煉獄••••艾无華の異能力。強大な力であるが故に、その力を艾无華は嫌っている。実は相性の良すぎる力なのだが……そんな事を彼女は知らない。




