project:019 鬼灯 艾无華
project:019 鬼灯 艾无華
人に、社会に、世界に怯える。誰もかも、何もかもから隠れてしまいたくなる。「他」は苦手だ。でも、1番苦手なのは――
ああ、一体、どうすれば――どうしたら――
「…………」
朝……か。さっきまでのは夢……なんて酷い夢なんだろう。
制服に着替える。いつもと変わらない日常、言うまでもなく、最低最悪の日々。それに反抗せずただ首を垂れるだけ……くだらない自分。
大嫌いだ。
「おはよう、艾无華」
「あ……おはよう、ハッカ」
人は苦手。どうすれば回避できるかなんて、くだらないことを考えているくらいには、関わりを無くしたいと思っている。けど、こんな私にも挨拶をしてくれている人に――彼女に、答えたいと思っている私がいる。
気持ちの悪い矛盾。
「――だから、ここの問題を……鬼灯さん、どう?答えられそう?」
「あ…………」
心臓が破裂するかのようにどくどくと音を立てている。言いたい答えが間違っている時のことを考えると、言葉が詰まってどうしようもない。
「……わからなくてもいいんですよー、じゃ、後ろの人分かりそう?」
これが自分。答え1つも言い出せない、臆病者。涙が滲んで、泣きたくないのに涙だけ溢れてくる。
バカみたいな、自分。
「それでな、次の実験は大学のほう行ってやるんだわ」
「ええすっご!仲間入りじゃん!」
「言い過ぎだろ」
笑い合うみんなの話し合いにもついて行きたくない、億劫と思っているのに、1人になるのは嫌だと感じているこの憎たらしい感情。
手に持った箸を燃やしたくなる。
「……鬼灯さん、この絵の顔、少し横長になりすぎてる、それと――」
他のみんな、何も指摘されていないのに、私は1人、先生に修正をされている。
静かな空気の中で、鉛筆を滑らす音だけが聞こえる中で、人の声が混じる。
――なんて地獄。なんて屈辱。
「――さんはすごいよねえ!賞に選ばれたってさ、いいよねえ」
「いやいや、ありがとうございます…………あ、鬼灯さん、この後どう?カラオケとか行かない?」
「あ…、ごめん、塾があるから……」
そっか、……じゃあまた!、だなんて、2度とごめんだ。あの子と、一緒に、何かするだなんて……もう2度としない。
1人で帰路に着く孤独感。苛まれる嫌悪感。だからと言って生を手放せるわけでもないこの意気地なし。
これが、自分。これが、鬼灯 艾无華という、馬鹿みたいな人間。
鬼灯 艾无華••••ほおずき げんげ。性別・女、身長・161センチ、体重・51キロ、血液型・α型。人を嫌いながらも、人に好かれたいとする、矛盾を抱えた、燃ゆる異能力者。




