project:017 里見 里見
project:017 里見 里見
…………今日は思わぬ客が来た。
いつもと同じ常連さん、同じ不良、同じワンコ。同じ日常だと思っていたけど、伊弉ちゃんがいらしてくれたことで、ちょっぴり非日常になった。
伊弉ちゃんとの談笑を反芻しながら、私は店じまいを始める。向こうも大変そうで、「心臓がいくつか欲しい」って嘆いていた。
こっちもこっちで大変。怪我をして帰ってくる血気盛んな不良達を宥めて、怪我の手当てをして、団子を渡して、犬の呪いを解いて。
まあ色々よくわかんないことばっかりだけど、おばあちゃんが残してくれたこの団子屋を、後世に残すことこそ我が一族の想い……なーんて、思ってみたり。
「……おい」
物思いに耽っていれば、この始末。第一の居候のご帰還に気づくこともなく、あろうことかホースの水を掛けていた。不思議なものだ、確か花に水をやってたのに。
「テメェ、人に水かけるとかフツーじゃねえからさっさと休めや」
毒を吐きながら、店兼家の奥にズンズン入っていくあの不良。薄ピンクの――桜色のスカジャンを羽織った彼こそ、第一の被呪者、八タ 一崇。いざこざとどんちゃん騒ぎの後、この家で同居することになってしまった。(理由の多くは彼が呪いにかかったからなのだが)
初めは獅子王のように孤高をゆく彼ではあったが、今となってはすっかり角も取れ、なんなら家事の手伝いまでするとか、とんでもない優男に育ってしまった。
今も、ほら。私の(頭の)心配をしてくれた。
とにかく、一崇の助言に賛成して、さっさと切り上げよう。今日はまだ肌寒いし、お風呂も洗って……ごはんは、鍋でいいよね?
「どうせ、お前、簡単な鍋とかにすんだろ。家に無ぇもん買ってきたから使え」
ずい、と、買い物袋いっぱいに詰まった食材達を渡された。そろそろ他の連中も帰ってくるだろ、と言いながら部屋の奥に消えて行くのを、ぼーっと眺め見て、「他の連中」のことを考える。
理不尽、驚き、摩訶不思議。どんちゃん騒ぎで嫌だと思う時もあるけれど。
皆が帰ってきてくれる家を守りたいな。
里見 里見••••さとみ さとみ。性別・女、身長・159センチ、体重・50キロ、血液型・α型。見えざる呪いと闘う、団子屋の女店主。




