project:016 団子屋さとみ
project:016 団子屋さとみ
さて、見回りも済んで、あとは家に帰るだけ。西区の桜並木を眺めながら、ふと、ある店のことを思い出す。
「久しぶりに、行ってみようかな」
今日は平日だけど、彼女ならいるだろう。
そう思って、私は踵を返し、ある場所へと目的地を変えた。
「ごめんくださーーい。誰かいますー?」
桜華高校近くの、昔ながらの建物が並ぶ、商店街。そのはずれの方にある、一見普通の家に見えるこの建物こそ、今回私世の目的地。
のれんは出てたし、空いているはずだけれども……人の気配がない……
もしかしてお留守かなと、帰ろうとした時に、奥から女の子の声が聞こえた。
「はいはーい、申し訳なーい、ちょーっと立て込んでてえ……あ!伊弉ぁ!いらっしゃい!」
――里見 里見。同い年。桜華高校の生徒であり、この「団子屋さとみ」の店主。
色々気になるところはある。苗字も名前も「さとみ」ということ。桜華高の生徒であること。お店の店主をしていること。
まあそんなことは置いておく方がいいので、ほっておこう。とにかくここの団子(及び餅)は美味しくて最高。それだけ覚えていればいい。ということで、お目後の団子を頼もう。
「醤油団子と、大福2つ……っと!承りました。少々お待ちくださいませ!」
とびきりの笑顔と共に、手際良く、団子を並べて、袋に詰める。私が醤油団子はここで食べると言ったから、出来立てを準備してくれている。
多分奥に、他のメンバーがいるんだろうなー、なんて、思ったり。
実は、この里見家、代々動物の呪いを鎮める家系で(特に犬)、この里見里見はその中でも奇怪で、複雑な呪いを持っていて……色々あって確か8人か9人くらいの人と暮らしている。
最初こそ里見ちゃんはよく愚痴をこぼしていたけど、今となっては慣れたみたいで、仕事にも支障はなくなったと見ていいかな。
「……はい、お待ちどうさま!では先に大福2つと……はい、醤油団子です!そこにお掛けになって召し上がれ!」
そうそうこれ。この醤油団子が絶品なんだよね……
わくわくと食べるのを楽しみに席に座ると、隣に里見ちゃんが座った。団子の感想を待っているのかも。
一口食べようとしたら、変なところに当たって、舌に激熱な団子が触れた。
「あ゙っ゙っづ!?」
「大丈夫!?ふーふーして食べてよ!?」
うん、大丈夫……と、もう一度団子を口に入れる。今度はちゃんと食べれて、香ばしい醤油のお味ともちもちの団子の食感が感じられた。
「…………やっっっぱ美味しい!」
「そお?そんなに褒めてくれる嬉しいや……」
そのままぱくぱく食べて、醤油団子はすぐに食べ終わってしまった。
そのあとは里見ちゃんと他愛のない話をした。最近のこと、桜華のこと、団子屋のこと……
そうしたらもう夕方になってしまって、店じまい。そのまま私たちは別れて、私も帰路についた。
……帰り道、大福に喜びすぎて転んだのはここだけの話
団子屋さとみ••••里見里見が運営する団子屋。不良も悪霊もお客として扱う接客力が評判。




