project:015 桜華
project:015 桜華
桜華――桜華高校を根城にする不良集団。正式名称、桜華十咲。生徒のほとんどが桜華のメンバーで、学校の運営、管理も桜華のメンバーが行なってるらしい。学校外は桜の名所が多くて、桜華高校にも樹齢数百年を誇る大きな桜が今も生きている。
そんな高校の前に、私、地名伊弉はいます。
1つ正門を越えれば、そこら辺にたむろしていた「学生」達が、一斉にこちらを向く。無理もないんですけどね、この前少し成敗したし。
「……おうおぅ、逢魔の地名じゃあねえか」
奥から声がする。そっちに意識を向ければ、1人の少年が私に向かってきている。身長からしてあどけない少年かと勘違いするけども、その声は年相応の低い声。特徴的なのは、顔に紙を貼り付けていること。だから表情は見えない。そんな男の子――百瀬 百百は、この桜華十咲の頭領。
後ろに強面の集団を引き連れているから、圧がすごい。そもそも、百百だけでも殺意が高いのに。
「どうも、桜華さん。お変わりありませんね」
「何がだ。気に食わねえなぁオイ、何様目線だ?あ?」
「勝者目線ですけど」
……チッ、と舌打ち一つ。身を翻して百百は言う。
「あいさつはいい。話は聞いてんだ、ついて来い」
校庭の隅、少しの芝生が生える場所に、大きな桜が1本、どっしりと構えていた。それを百百と2人で見上げて、幹をなぞって、つぶやくように聞く。
「それで、あの後からどうです?『百年桜』は」
「この調子だ。イラつくが、手前の言う通りだった。あれから、桜佩病の進行はねえ」
桜佩病――桜にさらわれる病、桜を纏う病。ここら一帯では伝説級にして、珍しくもない病気。この百年桜のせいで、桜華の面々はその病気にさらされていた。百百もそう。それを少し前に戦った時、なんとかして治した。それから、再発しないように、見回りも兼ねてお邪魔しているのだ。今日もそれで来た。
「元気ならいいんです。じゃあもうひどい悪さはしないように、よろしくお願いしますね」
「……チッ、分かってるわ。手前らとは仲良くやってやるよ」
そうして私は帰路につく。帰りはどこに寄ろうかな。
桜華••••桜華十咲。不良にしては正義感と共感性が強い人間達が多い。桜を愛し、桜に恋をされた集団。




