project:010 魔術
project:010 魔術
「よし、それじゃあお次は魔術についてだな!」
先ほどの教師が杖で軽く円をなぞった。すると、空間に文字のような、記号のような模様が浮かんできた。
「これが、魔法陣。魔術ではこんな具合に杖と魔法陣を使うのが一般的だな!」
魔法陣が淡く光り始めると、教室にあるものを次々に浮かばせた。
「魔術はだいたい、そこにある物体に干渉するものが多くてだな、魔法みたいに何かを生み出したりするのにはあまり向かないんだ。魔術で大木を生み出そうとすると、何人ものでっかい杖持った魔術師が必要だ」
教師が杖を振る。すると魔法陣は消え、浮かんでいたものたちはふわりふわりと落ちてきた。
「じゃあ今度は魔術のすごいとこ、教えちゃうぞー!」
そもそも魔術は魔法に対抗して作られた分野なんだよな。魔法っていうのは才能ありき!魔力少ない奴らには不向きだったんだよ。ほら、魔術の祖と言われてるクリフォード•エイテラーも魔力量が少なくて、魔法の才能はなかったって教わったろ?
そんな魔術の特徴は、少ない魔力量でも十分な効果を発揮できる、だろうな!まず、あらかじめ定められた型の魔法陣を思い浮かべて出現させる。そこに魔力を一定数注ぐ。するとその魔法陣に刻まれている術効果が発動する、っていう仕組みだ!もともと魔法陣があるからその型を暗記するだけでいいし、魔法と違って想像する方に力をほぼ使わないのがいいところだな!
だからって魔術が魔法より秀でているっつーことはないと、俺は思うぜ。今でも「魔術派」「魔法派」なんていう派閥があるから、どっちかにつかなきゃならんとか思ってるかもだが、お前らの世代からは、魔法も魔術も両方扱えるような人材、もしくは、お互いの違いを理解し協力できるような「魔法術師」になってほしい。
「そんな訳だから、俺の授業くらいはせめて、自分の得意な方を使ってくれ!以上!前置き終わり!結構時間経ったなあ……まぁこれから授業していくぞ」
教室から不満の声が漏れる。しかし先ほどとは違って眠りこけている生徒は1人もいない。皆教師の話を聞いて、自身が次代であることを認識したようだ。
…………まだまだ授業は続く。観察は、ここまでにしようと思う。
魔術••••最小の魔力で、最大の効果が発揮できるよう、生み出された方法。魔法が才能ありきというならば、これは努力ありきと言えるだろう。




