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76話 始まった運命のパーティー

 ――それから更に数日が経ち、いよいよリアン様たちの魔法学院卒業パーティーの日が明日に迫った。


 あれからもリアン様は私に対して特に態度を変えていない。

 そしてヴァンはあの日以降、一切の予知夢を見なくなったと言っていた。

 私は、少し前から聞こえていた私の中の声のことは特に誰にも話していないが、おそらくあの声の主であるルミアが伝えたかったことを徐々に理解し始めていた。


「私がするべきことも多分、わかった。……気がする」


 私は自室でひとりごちた。

 この数日であの声は……ルミアは頻度を増して私へと言葉を投げかけてきていた。

 おかげで私には見えてきていた。


 これまでの全ての、ヴァンの予知夢が示していた私の死の意味も。


「だから明日、私は私の決めた行動を起こすわ。間違っていればきっとおそらく私は、死ぬ」


 でも、多分大丈夫。

 問題があるとすればただひとつ。


「私のちっぽけなプライドと羞恥心だけね」


 だからこそ、明日の卒業パーティーまでに私は覚悟を決めなければ。




        ●○●○●




「ルフェ、その薄いブルーのドレスはとてもよく似合っているね。少し僕の趣味と違うけれど」


 ついに開かれた卒業パーティー、その当日。

 私はリアン様と共に、魔法学院の敷地内にあるパーティー会場へと訪れていた。

 ドレスは以前ヴァンに選んでもらい舞踏会で着ていた物だったので、リアン様がほんの僅かに嫌味を含む物言いをしていた。


「リアン様、いよいよ今日ですわね」


「うん、いよいよキミとの関係について、皆に公表できるよ。僕の学院の同期たちは多くが高位貴族の家柄だ。きっと色んな意味で良い宣伝効果になるよ」


「ええ、そうですわね」


 良い宣伝効果、か。

 それはつまり私を陥れて、そして自分はエルフィーナ王女殿下と華々しく結ばれるということだ。

 そういうつもりなのはわかっているうえで、リアン様はまだ笑顔の仮面を外さない。本当に恐ろしいほどの演技っぷりだ。

 とはいえ、彼がここで私に行なうことはもうすでにわかりきっている。

 だからこそ、私も勇気を出さなければならない。

 

「卒業生の皆様! ご友人やパートナー、そして来賓の方々も! 今宵はようこそお集まりくださいました!」


 司会進行者が声を出して、いよいよ卒業パーティーは始まりを告げた。

 会場内は多くの魔法学院生たちやその連れで賑わっている。

 グレアンドル家のドウェイン様、ミゼリア、プリセラも今宵のパーティーに参加している。何故なら今日は筆頭公爵家であるグレアンドル家から大切なお知らせがあると事前に打ち合わせがあったからだ。


 リアン様はこの大勢の場で私との婚約を発表すると見せかけて、逆に婚約破棄をする予定だ。


 その時に私は……。


「ルフェ、キミは卒業生じゃないけれどここに出された食事は自由に食べて良いんだよ」


「ありがとうございますリアン様」


「僕は少し他の貴族の人々と挨拶を交わしてくるから、キミはこの辺で適当に食事を楽しみながら待っていてくれ。僕が戻ったらキミのことを皆に発表するから」


「はい、わかりましたわ」


 そう言ってリアン様は私から離れて行った。

 リアン様が戻ったら、そこが正念場。


「ルフェルミア」


 背後から名を呼ばれ振り返るとそこにいたのは、髪型と髪色をカツラなどで変装したドラグス王太子殿下と、同じく変装した聖女メリアだった。


 ドラグス殿下とメリアたちも来るべきに備え、こうして変装してパーティー会場に参加しているのである。


「話はあらかた聞いている。ただ、今宵キミとヴァンが何をするかはまだ聞いていない。一体どうするつもりだ?」


「それは……その時になればわかります」


 私が答えるとメリアが笑った。


「ルフェルミア、あなたがヴァン様と何を企んでいるかは存じ上げませんけれど、此度の件に関しては感謝しておりますわ。だから、まあ、その……もし何かあれば、ちょこっとはお手伝いしてあげますわよ」


 実はドラグス殿下にメリアをパートナーとしてこの卒業パーティーに参加してほしいと頼んだのは私だ。 更に私は先日、ドラグス殿下にメリアの想いをこっそり伝えたおいた。

 ドラグス殿下はメリアの気持ちについて全く信じていないが、それは今夜のメリアの行動次第だろう。


 ヴァンはまだここには来ていない。

 が、必ず来てくれると信じている。


「私の勝手な勘なのですけれど、リアン様は私を陥れることはするだろうけど、もはや殺意までは持っていないと思います」


「そうなのかルフェルミア?」


「はい殿下。だからヴァンの予知夢が告げていた私を死に追いやる犯人は、もはやリアン様ではないと私は結論付けました」


 私がそう言うと、メリアが頷いていた。


「ええ、私もそう思いますわね。正直、リアン様がどんな手を使ってもルフェルミアを殺せるだなんて到底思いませんもの」


「そう。私もそう思ってた。でもやっとわかった気がするの」


 私を殺す、その真犯人。

 それが誰だか、私にはおそらくわかった。


 だから、今日ここでそれに決着をつける。


「じきにリアン様が戻ってこられます。殿下とメリアは少し離れていてください」


 私は彼らにそう告げて、いよいよ覚悟を決めたのだった。



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