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47話 ふざけた女

「まだ起きていたか」


 ドラグス王太子殿下とメリアを送って帰宅したヴァンが、また窓からこっそりと私の部屋にやってきていた。

 ちなみにヴァンたちと入れ違いになるようにリアン様とミゼリアお義母様も戻られた。リアン様は酷くお疲れのようで私に一言だけ挨拶をしてすぐ自室に戻って行った。


「どうしたのよ?」


「お前に少し聞きたくてな。メリアとは顔馴染みなのか?」


「……ええ。話すと少し長くなるのだけれど」


 メリアとの因縁は昔からだ。

 彼女も私の父、ガゼリア・イルドレッドのもとで共に暗殺スキルなどを学び共に成長した同胞なのだが、彼女は何かと昔から私をライバル視しており、ことあるごとに突っかかってきていたのだ。

 そんな彼女も潜在的に高い魔力を保有しているのだが、それでも私の魔力には遠く及ばない。それがよほど悔しかったのだろう。いつも私のことを目の敵にしていた。


「なるほどな。やはりとは思ったがルフェルミア、お前さっき手を抜いたのだろう?」


「魔力球のことならそうよ。あんなの本気出したら大変なことになっちゃうもの」


「お前が本気出すとどのくらい翔ぶんだ?」


「最大値ね」


「最大値?」


「魔力球には込められる最大魔力の上限があるの。それ以上は球が破裂しないように魔力が入らない。そこまでよ」


「ちなみにそれで投げるとどうなる?」


「おおよそ60秒くらいかしらね。球が戻ってくるまで」


「なるほど、それはとんでもないな。まさかメリアはそれを知らないのか」


「ええ。彼女と随分前に魔力球で高さ比べをした時も、確か私は25秒くらいに抑えちゃったから」


「そうか。メリアは、お前が今回手を抜いて自分に華を持たせたことに気づいて怒っていたが、そもそも以前から本気のお前に気づいていない、という感じか。面倒な……」


「面倒なのよ、本当に。それよりあなたはなんでメリアなんかと友達なのよ?」


「メリアが新たな聖女として天啓を受けた日に、俺がドラグスと共に彼女を迎えに行った。その日からの顔馴染みだ」


 なるほど、話が見えてきた。

 メリアは五年前、大王都カテドラルのとある医療施設へ潜入捜査を行なっていた。それからしばらくしてミッション完了の報告と同封された手紙に、こんなことが書いてあった。


『トラブルに巻き込まれ、帰れなくなった。自分の安否は問題ないがしばらく帰れそうにない』


 我が父は何故かメリアについては放っておくと判断し、イルドレッド領の者たちもそのうちメリアのことを忘れかけていた。

 どうやらその間に何かあり、メリアは聖女として天啓を受けここで暮らしているのだろう。


「メリアはルフェルミアほどではないが強力で希少な光属性魔力の使い手だ。先代の聖女が不慮の事故で亡くなり、次の聖女を大神官様が探していたところ偶然メリアが見つかり抜擢された」


 多分、おそらくこれが偶然ではないのだろう。メリアは色々画策し、自分が聖女になる為に動いたのだろうな。


「わかったわ。で、それだけを言いにきたの?」


「いや、彼女に関する別件で実は困ったことになった」


「何よ、困ったことって?」


「その例のメリアから、告白されてしまった」


 ……?


「……ん?」


「好きだ、と。付き合ってほしい、と言われてしまった」


 ……何よ、それ。


「何よ、それ」


 感情と言葉がそのまま出てしまっている。


「落ち着けルフェルミア。顔が怖い」


「うるさいわよ。どういうことだかちゃんと説明して」


「ああ。先の帰り道、ドラグスを先に王宮へと送り届け、最後に大聖堂へとメリアを送っている道中だ。メリアが突然俺の手を握ってきて、そう告げた。出逢った頃から俺のことが好きだったそうだ。告白ついでに抱きしめられそうになった」


「だ、抱きしめたの!?」


「いや、不意打ちだったのでかなり危なかったが、すんでのところで回避した」


「回避……そ、そう………。それであなたはなんて答えたわけ?」


「それはできないと答えたが、まだしばらく考えてみて欲しいと言われてしまった。しかし問題はここからで先日話した王家の舞踏会にパートナーとして誘われてしまった」


「そんなの断ればいいわね」


「一回は断ったがそれもしばらく考えてと言われてしまった」


「考えても一緒じゃない。断るだけでしょ? だってあなたは私と出るんだから」


「うむ、そのつもりなのだがメリアはどうにも押しが強い。おそらく何度も誘いにくるだろう。あまり話が発展して俺とルフェルミアが舞踏会に出ることがリアンにでもバレたりしたら面倒なことになりすぎる」


 確かにあの子はこうだと決めたら頑なだものね。

 それにしても聖女なんて似合わないことをしているだけじゃなくヴァンにまで言い寄るだなんて、本当にふざけた女ね。


「だから彼女からの誘いは断り続けるが、もしその件でルフェルミア、お前にも何か言ってくるようなことがあっても上手くとぼけて欲しい」


「なるほどね。確かに私たちの関係が知れ渡るのは非常に良くないわ」


「だろう? それを伝えにきた。そういうわけだから、リアンや他の者たちにもくれぐれも悟られないようにしてくれ」


「わかったわよ」


「それと最後に重要なことを伝えておく。今晩、俺がここから去った後についてだ。この後起こることについて、お前に伝えておく――」


 ヴァンは最後にそれだけを言い残し、窓から出て行った。


 これはなんというか、舞踏会の前にもうひと波乱起きそうな予感がするわね……はあ。




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