表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/81

14話 全てを見てきた男

「は? 私の未来? ってどういう意味?」


「そのままの意味だ。俺には未来が……見える」


「何よそれ。頭でも湧いてんの?」


「違う。ほらみろ、やっぱり信じない」


「し、信じるわよ! だからもっとちゃんと説明して!」


「……ルフェルミア。魔力感度の高いお前ならわかるだろう。俺からはほとんど魔力を感じないことを」


 ヴァン・グレアンドルの言う通り、出会った頃から貴族特有の持つ魔力を、彼からはほとんど感じ取れなかった。

 グレアンドル家の血を引く者は総じて魔力総量が低いが、それでもヴァン・グレアンドルからは異常なほど魔力を感じられなかった。

 これは先日リアン様から聞いたことだが、どうやらヴァン・グレアンドルは幼少期に大きな事故に遭い、生死を彷徨うほどの大怪我をしたらしい。

 懸命な医師たちの治療の甲斐もあって彼は一命を取り留めたが、それ以降、彼の魔力は激減してしまったのだそうだ。


 これは特に珍しいことではなく、魔力というものは生命エネルギーにも直結していて、生命の危険が迫った時、その魔力と引き換えに身体をとにかく治癒しようと強引に働くらしい。

 その結果、魔力を失ってしまったという人がいることを私も知っている。


「リアン様から聞いてるわ。大怪我をしたからでしょう?」


「……原因はそうだろう。だが実際は俺の魔力は失われたのではなく、別の形になって働いている」


「は? それはどういう意味かしら?」


「俺は幼い日の大怪我のあとから、毎晩必ず予知夢を見るようになった。しかもそれは夢ではなく必ず現実になる」


「よ、予知夢ぅ……?」


「うむ。詳しく話すとだな――」


 それからヴァン・グレアンドルはこう語った。


 なんでも彼はその大怪我のあとから、眠ると必ず毎晩、繊細に記憶に残るほどの夢を見るのだという。

 その予知は明日以降の未来の人生を凝縮させて見せてくるそうだ。

 その予知夢の中で、私と婚約することも、そして私の正体、つまり裏稼業についても夢で見ていて全て知り得ていたのだとか。

 しかし彼が見る夢は彼の行動次第で変化するらしく、彼はその予知夢で問題が起こり得る未来を見た時、()()()()()()行動を変えてみるらしい。


 そして彼の説明では、どうやら私は近い将来、何者かに殺されてしまうのだとか。


「……にわかには信じ難いのだけれど」


「だが、事実だ。すでにお前は俺の夢の中で数えきれないくらい死んでいる」


「え?」


「しかもそれは俺の身内の手によって殺されている場合も多々ある」


「な、何よそれ。どういうことなの?」


「俺が普通にお前と婚約したままでいれば、お前はミゼリアお母様の手の回した者によって殺されていた。俺がお前の傍でお前を常に守ろうとしても、どうやっても上手く行かずにお前は殺された。俺が別の女と婚約してみても、お前は結局俺のもとに来てその女を暗殺して俺の婚約者となり、結果は同じだった」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。それだとあなたはまるで未来を何回も体験してきたみたいじゃないの!?」


「少し違う。俺は夢の中で擬似体験してきた。夢の中での行動はそのまま夢の中で反映される。夢の中で俺は様々な方法を試した。その中で最善の結果を現実に反映させている」


「あー……そういうこと……」


 でも待って。それってつまり、ヴァンは私のことを助けようとしてくれているの?


「……お前は何があっても殺された。グレアンドル家にやってきてから一ヶ月後の、俺がお前を婚約破棄したあの日に必ず」


「それってつまりミゼリアお義母様が私を狙ってるってことよね。それがわかってたら私、殺されないわよ? そんな軟弱じゃないし」


「駄目なんだ。確かにお前は強い。だが、お前の計算外のところで必ずお前は死ぬ。まるでそれが運命だと言わんばかりに。それにお前を殺す者はミゼリアお母様だけじゃない」


「な、何よそれ!? どういうこと!?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ