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12話 魔女王ルミア、転生する

 ……ッ!!


 パッと勢いよく瞳を開く。


 なんてことだろう。

 そんなことがあるのだろうか。

 でも……そういうことだったんだ。

 私はたった今、全てを理解した。


 私の生まれつき持つこの類い稀なる絶大な魔力と、そして今現在、こうなってしまった理由も全て。


 私には前世、というものがあったらしい。そして前の私は多くの悔いを残して死んでしまった。

 人なんて、死んでしまえばただの肉の塊になるだけだと思っていた。けれど、違った。

 人の精神や魂というものは本当に存在していて、新しい命へと還ることができるのだと知った。


 私の前世は……魔族の王だ。

 かつて世の魔族、魔物たちを統べていた王の中の王。

 魔女王(まじょおう)、ルミア。


 この世界にはおよそ千年も昔、絶大な魔力を持つ魔族の王がいたことは多くの者が伝説として知っている。

 当時の文献を読んだことがあるが、その頃は魔族や魔物が多くはびこり常に人々を脅かしていたらしい。魔物たちの侵攻が進み、このままでは人間が絶滅するというところで人間の勇者が現れ、そしてついには魔族の王を討った。

 その前世の精神、魂的なものがつい今しがた、私の中で目覚めた。

 目覚めてしまった。

 この絶大な魔力は前世が魔女王だったからなのね。と、ようやく理解できた。


 そして気づいてしまった。

 魔女王ルミアとして生きたこの私を殺した勇者。

 私のことを愛してくれた人間の男のことを。

 ナーヴァのことを。

 そしてナーヴァに瓜二つの彼、ヴァン・グレアンドルこそがナーヴァの生まれ代わりであることを。


 私も彼を愛していた。しかし私たちは魔族と人間。決して相容れない存在。結ばれてはいけない禁忌の愛だ。かつての私たちは立場上、もはやどうすることもできなくて、二人で心中することを選んだんだ。


 その時、私と彼は奇跡にすがった。

 その奇跡とは、世界最古の禁呪と呼ばれる転生の秘法。

 この禁呪を行なった者は確実に死に至るが、その魂は別の世代で生まれ変われると言われた伝説の呪法。

 ただし、確証はなかった。

 何故ならその呪法は効果の結果を確かめる術がないからだ。

 それでも私たちは伝説の呪法に、奇跡にすがった。

 来世でも私はナーヴァと共に生きたかったから。


 そして今、確信した。

 あの禁呪は成功していた、と。


 魔女王ルミアはルフェルミア・イルドレッドとして、人間の英雄ナーヴァはヴァン・グレアンドルとして転生を果たしていた。


 彼と出会うまで私はただ魔族の王として殺戮に明け暮れた日々ばかりだったが、彼が私の世界に色を与えてくれた。命の尊さを、喜びを、愉しさを、そして愛を教えてくれたのだ。

 そんな彼が凄く凄く愛おしかった。

 そのことを思い出してしまった。

 愛なんて言葉からは程遠いはずの、今のこの私が。


 蘇った記憶に混乱させられながらも身体を起こして周囲を見渡すと、薄暗い中でも見覚えのある天蓋付きのベッドに私は寝かされていることに気づく。

 そうか、ここはグレアンドル家の私の部屋だ。


 私はあれからどうなった?

 確か……。


「目覚めたのか」


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