第6話 イレギュラー
振り返ると、ミノタウロスが倒れていた。
いや、倒れているのではなく、何かにつぶされていた。
「おいおい、そんな……!あいつは、ここには出現しないはずだぞ!」
ゆっくりと立ち上がるのは5メートルを超える巨体。
濃い緑の肌に白いツノ……
大鬼、オーガとも呼ばれるモンスターがそこにいた。
ダンジョンのモンスターの強さは下に潜れば潜るほど強くなる。
下層のモンスターはギルドから基本4人以上のパーティで挑むことが必須とされているほどの強さになる。
オーガは筋骨隆々の腕から振り下ろされる一撃が驚異的。
どこぞの配信で挑んだ配信者がワンパンで身体が弾け飛んだ、なんて話もよく聞くぐらいだ。
それに体格に見合わぬ俊敏さを備えている。
種類によってはワイバーンですらジャンプして空中で倒せるほど。
そのため、Aクラスがそろっているパーティでも見つけたら戦闘を回避するほどだ。
絶対に中層には出現しないモンスター……
俗にいうイレギュラーモンスターというやつだ。
確かネットの情報だとダンジョン3人娘はおそらくC~Bクラス。
到底かなうはずがない。
「い……いやぁ……」
タンクの娘は後退を始めてゆっくり動いているが、ヒーラーと魔導士の二人は完全に座り込んで動けないようだ。
うん、これはとても、とてもやばい状況だな。
流石にこの状況を見てみぬふりするほどの男ではない。
とりあえずオーガの注意を俺に向ける方法を考えないと!
俺はバッグの中を確認しながらオーガの前に走り出した。
取り出したのはステーキ用に買ってきていた胡椒の瓶。
これをあいつの顔に投げつけて注意を引こうと考えたわけ。
胡椒が目に入って悶えない生物はいないだろうしね!
俺は絶対に嫌!
やられたら100倍にしてやり返すよ?
大きく振りかぶって瓶を投げる。
放物線を描いてオーガの顔まで飛んでいく。
そのタイミングでマジックアローを瓶に向かって発射。
俺、魔法には自信があるのさ(ドヤ)
ちょうど目の位置で瓶に当たり中の胡椒が顔に降りかかる。
おー、ジャストミート!
オーガは目を押さえて後ろに倒れた。
染みるだろう?痛かろう?
……冗談言っている暇じゃないな。
今のうちに助け出さないと!