第42話 手続きが終わるまで
「……はぁ、もう田島さんに常識が通用しないことがわかりました。諦めました」
「……そんな常識なしみたいに言わないでください。常識があるから黙ってたんですから。ほらちゃんとアイテム持ち帰りもゼロでしょ?てかそんな記録まで残ってたんですねーこれ」
深淵に行ったなんて言ったところで信じて貰えない。
まして俺はEランクなんだから。
錯乱系魔法に頭をやられたか、狂言だと思われるだけだしね。
「何でここまでの実力があって昇格試験に合格しないんですか、何ですか?やる気ないんですか!」
「やる気があるから受けてたんでしょ!試験会場の雰囲気が苦手なんですよ!試験会場には悪魔がいるんですー!」
小さい頃から試験が苦手で苦手で。
高校、大学受験も模擬試験は満点取れたのに本番はギリギリだったもんなー。
大学入試、ほんとギリッギリだったもん。
「……マジであり得ない……そんなことあります?」
「有り得るから仕方ないですって。あ、お茶飲みます?」
「要りません!てかどこからお茶を?!」
「あそこの給湯器」
「あぁー!もうー……」
福崎さんが頭をおさえてしゃがみこんでしまった。
「……とりあえずモンスターの討伐数がわかったのでランク昇格手続きに入ります。はぁ…やってられない」
「……心中お察しします」
「心穏やかにならない原因の人に言われたくないですね!」
すみません。
昇格手続きには、時間がかかるみたいなので熊本城ダンジョンの掲示板を見てみる。
掲示板と言ってもネットのやつではなく、リアルの掲示板だ。
掲載されている内容は素材の募集やモンスター討伐依頼、パーティーの募集などの情報共有が主な目的だ。
掲示板がおいてあるダンジョンは結構あるけど熊本だとここと阿蘇山、天草の3つ、どれも大規模ダンジョンなのでパーティー募集が主な内容だ。
この辺、ネット社会なのにローカルだよねー。
まぁ、ファンタジー感があって俺は好きよ?
たまにここでしか得られない情報があったりするしね。
「ふむふむ、オークの群れが下層と中層の間に居座ってるのか……パーティー募集してるけどオークってそこまで稼げないからな。お、こっちはヒールフラワーの採取依頼か。対象はCランク!へー今の子達こんなものも集めているのかー。確か採取には特殊な道具がいるよな?大変だなー」
オークは簡単に言うと二足歩行の豚だ。
大きさは人間よりも一回り大きく、危険度は低いが群れることが多い。
危険度が低いから討伐しても手に入る素材も安い。
まぁ肉が手に入るので俺は好きなモンスターではある。
群れるからサクッとまとめて倒せるしね。
ヒールフラワーはポーションの材料。
乾燥させて自宅で水につけて煮だせば超簡易ポーションになる。
同級生の実家で飲んだことあるけど渋みが強い麦茶だったよ。
そんな感じで情報収集をしていると、受付で悲鳴が上がった。
……声的に福崎さんだよなー、今の……




