第201話 封印されたもの
気に入った家には封印されたモンスターがいました。
そんなことある?普通ないよね……
そもそもモンスターを外に出すのは法律で禁止されてるんですが……
「何で桜小路さんは封印されてるとしてもモンスターをダンジョンの外へ?探索者としてやっちゃいけないことでしよ?」
「持ち出した……と言うわけではないそうです。ここからは長嶺支部長から承認を得て資料を読みながら説明しますね。これ、私も初めて読みますよ……」
「……ゴクリ」
南阿蘇さんから封印されたものについての話をきく。
門司ダンジョンの氾濫の際、桜小路さんは下層でオーガの群れを殲滅、蹂躙していた。
その際、オーガシャーマンというレアモンスターが隠れていて、倒した瞬間転移魔法が発動、深淵に飛ばされたそうだ。
最初は深淵とは思わず、深層ぐらいだろうと帰還ポータルを探して探索していると、未知のモンスターに襲われた。
帰還ポータルはそのモンスターの先、だがあまりにも強く討伐は無理と判断。
桜小路さんの秘技を使用した。
「この秘技はモンスターを別次元に飛ばす術だそうで、討伐というよりは一時撤退を想定していたとのことです」
「別次元……陰陽道ってそんなことまで出来るんですね……」
日本古来の術、すさまじいね。
帰還ポータルで地上に戻るとモンスターの群れは最終防衛ポイントを突破、そこからはニュースで放送された内容と一緒だった。
出てきたモンスターは門司の町はもちろん、対岸の下関まで押し寄せて町を破壊した。
桜小路さんは自分が戦線を離脱してしまったから、と塞ぎ込んでしまった。
それに呼応するかのように彼女の両腕に違和感が現れたそう。
「最初は両手の甲に小さなシミが出てきたぐらいだったそうですが、次第に痣になりどんどん広がっていったそうです。ポーションを飲んでも改善せず、呪い系を考えて聖水をかけてみてもダメだったそうです」
「ポーションも聖水も効かない……まさか寄生系モンスター?!」
「そう考えて桜小路さんは自分の腕を切り落とすことを選択されたそうですね……」
「え?自分の腕を?」
切断は人が少ない、福岡の山奥にあるダンジョン内で実施された。
最低限のギルド職員が立ち会い術式を用いて両腕を一刀両断。
両断後、すぐにエリクサーを飲んで再生し、モンスターを討伐する想定だった。
しかし切断された腕から出てきたのは、深淵で別次元に飛ばしたはずのモンスターだった。
「そもそも術式が失敗していたのか、戦闘中に身体の一部を寄生されたのかは不明ですが、両腕はそのモンスターになりかけていたそうです」
「自分の腕がモンスター……考えたくないですね……」
その後、暴れるモンスターをギルド職員総出で押さえ込み、回復した桜小路さんによって封印されたそう。
封印時、体力が回復しきってない状態で実施したため桜小路さんはそのまま倒れて数ヶ月眠り続けたそう。
封印されたモンスターはギルド本部預かりのとなり、東京に持っていかれたが、モンスターの魔力が強すぎて封印を突破、周辺が魔力溜りになり、ダンジョンのようになったため福岡に戻されたそう。
……厄介事になったら地方に丸投げするって、ザ日本企業って感じがするね。




