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第一話:魔王は敗れました。そして、現代に蘇りました。



『そうか』


『私は、敗けたのか』


―――

――――――

―――――――――



貴様を初めて見た時から、私は自分の脅威となる存在だと確信していたのだ。


―――数千年に一度生まれる、祝福を受けた人間族の選ばれし者。

私はこれまで1万年に渡りこの世界の絶対王者として君臨し続けるために、ありとあらゆる文献や伝承を配下の者達に集めさせ、どこから選ばれし者は生まれるのか。生まれた者はその後、どこへ渡るのか。選ばれし者が生まれる為に必要な条件はなんなのか。彼らが歩む道筋を先回りし、力によって鎮圧し、時には計略を巡らせ、私の脅威となる者は常に排除してきた。


しかし、どこかで間違えたのだろう。


貴様が例外だったのか。

それとも、私の目論見が甘かったのか。


今となってはもう遅い。


薄れていく意識の中、まるでこれから新たに生まれる命のような寒さと暗さの中で私は願った。

―――ここで終わるはずがない。私はこの1万年で積み上げてきた知を以て、いかなる世界であろうと再び支配者として君臨してみせよう。


『魔法も、魔族も存在しない世界で、たとえ脆弱な人間族であろうとも必ず』


私の意識は、まるで夢から醒める直前の白い(もや)に包まれ、途絶えた。



―――――――――

――――――

―――



<<二番ホームに電車が参ります、白線の内側に立って――>>

騒音と轟音。


<<電車が発車します、ご注意ください>>

鐘の音とも違う何かの旋律。


<<扉が閉まります>>

人間族達の群れの中にいるようだ。



小さな蒸気のような音とともに閉まった扉のガラス板に写っていたのが、紛れもなく人間族の顔貌である自分自身だと気付いたことにさして驚きは感じなかった。


紛れもなく私は、魔王として世界に君臨し、そして敗れ、今全く見知らぬ世界のどこかにいるという事実だけを冷静に受け止めていたのだった。

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