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第2話

 学校が終わり、帰宅した。

 玄関には女性ものの靴が置いてあった。

 姉は大学生なので、曜日によって帰ってくる時間はまちまちだ。

 今日は水曜日。水曜日は午前中しか講義がなく、バイトも入っていないので帰ってくるのがいつもより速い。


 玄関で靴を脱ぎ、リビングに向かうと、そこにはソファーでくつろぐ人影がみえた。ロングの髪をなびかせ、ワンポイントの白のTシャツにチノパンをラフな感じに着こなした清楚風な女性、姉がいた。スマホをいじっていた。最近はよくスマホを使っている姿を見かけることが多い。

 本当に彼氏ができたのだろうか……。

「た、ただいま」

「おかえりー」

 帰宅時の挨拶。いつもの挨拶。だけど、姉の顔をみると寒気を感じた。

 いま一瞬、目が虚ろじゃなかったか?

 僕が挨拶をしたら、いつもの優しそうな眼差しに戻っていたけど。

 気のせいか……。

 さっき友達とあんな話をしたあとだ。それが尾を引いているのかもしれない。

「お姉ちゃん、今日の夕飯どうするの?」

「おねぇーちゃんが美味しいコロッケ作ってあげようか!!」

 お姉ちゃんが作るコロッケは誇張なしで、世界で一番おいしい。

 僕の大好物だ。

「うん!」

「えへへ、おねぇーちゃん嬉しいなー」

 お姉ちゃんは僕に近づいてきて、頭をよしよしと撫でる。

 そして、包み込むようなハグをしてくれる。

 僕は拒むことはせず、ハグを受け入れてお姉ちゃんの腕の中に入っていった……


 お姉ちゃんは僕のことが好きだ。そして僕もお姉ちゃんのことが好きだ。

 好きって言っても恋愛的な意味ではない。姉弟として好きなのだ。

 いわゆる、僕たちはブラコンでありシスコンである。


 僕はいつも強気に振る舞っているが、姉の前になると借りてきた猫のようにおとなしくなって甘えてしまう……。

 けれど、このままじゃいけないという気持ちが芽生えている。

 もう幼いままの自分ではない。

 あの時のような弱い自分でもない。

 もう高校生になったのだ。

 過去の苦しみや悲しみをすべてお姉ちゃんに押し付けてしまった後悔が今でも心の奥底に残っている。罪滅ぼしではないけど、もしお姉ちゃんが悩んでいるなら、次は僕が助けたいと思う。いや、助けるのだ。絶対に。


 テーブルの上に食卓が並んでいる。

 お味噌汁に白米、メインのコロッケ。

 そしてコロッケにかける、ソースと醤油。

 一見、質素のようにみえるが、僕たちにとってはご馳走だ。

「ごめんね。育ち盛りの時期にこんなものばかりで」

「ううん!!ううん!!」

 僕は首を左右にふり、全力で否定した。

「お姉ちゃんが作る料理はすべておいしいよ!!」

 お姉ちゃんは涙目になり、僕に抱き着いた。

「さえちゃん!!大好きっ!!おねぇーちゃんもっともっと頑張るからねっ!!」

 食事が終わるまで、この愛情が途絶えることはなかった。


「「お粗末様でした」」

 食事の感謝を告げ、お茶碗を重ねて片づけをしようとした、そのとき。

 ピロンという効果音。

 スマホに通知が入った音。

 僕は携帯を持ってないので、お姉ちゃんのものだ。

 机の上に置かれたスマホからメッセージが浮き出す。

「お姉ちゃん、これは……」

「ち、違うから!」

 お姉ちゃんは雑にスマホをポケットに突っ込み、茶碗をもって急いで洗面台に向かった。


『紗奈さん、今週の土曜日13時に小松駅待ち合わせでいいですか?』

 アイコンと名前から、男性からのラインだと予想ができる。

 本当に彼氏いたんだ……


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