表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極論勇者は馬鹿でも出来る  作者: 夏之 夾竹桃
勇者召喚
1/3

第1話 勇者

 その日、俺は変わらず目を覚ました。特段変わりの無い平凡な朝。鳥が囀ずり、風が気持ちいい。


「あ、起きました?」


「あぁ………。」


 と、その声に返事をしてみたもののある違和感に気がつく。うとうととしたあの心地よさが一瞬にして吹き飛び、俺は覚醒を向かえた。目を開けるとそこには、金色の髪をした少女が僕を覗き込んでいたのだ。


「え、えぇ!!??」


 跳ね起きて、数歩彼女から後ずさる。と言うかここは?俺の部屋ではない。まるでここは聖堂の大広間………目の前に居る少女もゲームに出てくる僧侶のようだ。水色の瞳が美しく、顔もよく整っている。こんな娘に見られてたのかと言うドキドキとここはどこなんだと言うパニックでおかしくなりながらも何とかその声を発する。


「ここは………君は一体………。」


「まぁ、そうなることは知っていますよ。本来ならば起こり得ない事象ですから。さて、君が並木(なみき) 颯太(そうた)君ですね。」


「は、はい。」


 そう返事をする裏で思考を巡らせる。あり得ない事象?本来ならば?どう言うことだ?


「ここはそうですね………貴方からすれば別の世界。異世界とでも言いましょうか。」


「異世界………ですか。」


「そう。そして私はしがない聖職者ですよ。」


「は、はあ………。」


「ではでは、私から君がこれからしなければならないことを教えます。」


「は、はい。」


 明らかに俺より年下のはずだか、なぜか敬語で返してしまう。初対面だからと言うか、風格と言うか………ともかく不思議な人である。


「まず、君には勇者になってもらう。」


「………は?」


「まぁ焦りなさんな、お兄さん。これから先の5年後に訪れる大厄災から人類を救う存在になってもらうの。」


「い、いや、説明されても訳がわからないんですが………。」


「訳がわかんなくてもやるの。決定事項だから。」


「お、横暴では………?」


「しょうがないでしょ?昔からそうなんだから。と言うことで貴方は行くしかないの。ここに呼ばれてしまった以上ね。大丈夫。私が保証する。貴方のその正義感なら勇者になれるってね。」


「いや、どこの誰かもわからない人に保証されても………。」


「………まぁ、それもそうね。なら、自分の目で見てきた方が早い………5年後貴方は魔王と戦うことになるんだから。」


「随分と他力本願な世界なんだな………。」


「この力を使えるのは別の世界の人だけだからね。こればかりはごめんなさい。でも、この力のある限り、そして貴方の正義感が折れない限り貴方は死ぬことはない。これだけは絶対と言いきれるわ。」


「そうは言われましても、俺なにもできませんよ………?」


 運動神経も人並み、勉強もそこそこ。なにか突出した部分があるかと聞かれればはっきり申し上げて無い。そんな俺に勇者なんてと戸惑う俺に少女はその言葉を投げ掛けた。


「大丈夫です。極論勇者は馬鹿でも出来ます。勇ましき者と書いて勇者なんですから。貴方のその正義感は誰かを()()()()()()と言う意思があるからでしょう?知ってますよ。」


 まるで全てを知っているかのように話してくれる。その言葉に俺は屈するしかなかった。


「………わかったよ。やりゃいいんですよね?」


「そう。それでいいんだよ。さてさて、と言うことでまずは仲間集めだろう?」


「まぁ、そうなりますね。」


「ともすれば冒険者ギルドだ。大聖堂から出て大通りを進んでいけば左手に見えてくる。なに、言語はちゃんと読めるようになっているから安心しな。」


 と、その言葉を受け俺は頷いた。半ば脅しのようにも感じ取れたが、まぁ最終的に俺の決めたことだ。

 そして俺は、その道を歩き始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ