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第2話 痴漢騒動


「少し早いかなー」


 スマホで時計を確認すると、面接時間まであと一時間ある。

 このまま歩いていけば目的地まであと10分ぐらいだろうか。

 気合いを入れ過ぎて早く外に出すぎた。


「どこかで時間潰すか……」


 ハローワークで応募した会社の書類選考が通ったので、今日は待ちに待った面接日。

 嬉しい反面、緊張感が押し寄せてくる。


 近くのコンビニでも行こうか。

 立ち読みで時間潰せるし、それにトイレも行っておきたい。

 トイレの鏡でネクタイが曲がっていないかも見たいな。

 ネクタイ締めるのが数年ぶりなので、ちゃんとできるのかどうか不安だ。


「…………ん?」


 バス停で女子高生が立っている。

 その後ろにサラリーマン風の男がいるのだが、何か挙動がおかしい。

 一見すると、靴ひもを結んでいるように見えるのだが、紐に手をかけているのは片手だけ。

 もう片方ではスマホを手にしていて、しかもそのスマホは小刻みに動かしている。


「あれって」


 もしかして、靴紐を結ぶフリをして、スマホで女子高生のスカートの中を盗撮しようとしている?

 あんな露骨に盗撮する人なんて今の時代にまだいたのか。


 周りを見るけど誰もこのことに気が付いていないようだ。

 相談できそうな人もいない。

 俺が行くしかない。


 俺の勘違いだったら謝ったぐらいじゃ済まない。

 だけど、万が一もあり得る。

 女子高生を守る為にも俺は覚悟をして男に声をかける。


「あの、すいません。それ何しているんですか?」

「何ですか、あなた」


 サッ、と男はスマホをポケットの中に入れて眼を逸らした。


「…………!」


 その挙動だけで俺の考えが勘違いじゃないと確信した。

 やっぱり、疚しい事をしていたのだ。


「今何かしていましたよね? スマホ見せてくれますか?」

「な、何を言っているんだ、君は!!」

「な、なに?」


 俺達が言い争っていると、女子高生が訝しげに振り返る。

 すると、男は開き直ったようにこちらに指差しをしてくる。


「この人痴漢です!!」

「は!?」


 俺は頭が真っ白になる。

 男はまさかの俺に濡れ衣を着せて来た。


 ザワザワと周りにいた人達の視線が俺に集まって来る。


「警察呼んでください!! この人、女の人のスカート触ろうとしてました」

「最低っ!!」


 守るはずだった女子高生からも疑いの眼で見られ、そして周りの人達も俺を痴漢だと誤解しているようだった。

 俺が逃げないように周りを囲み出す。

 なんだこの正義感。

 そして、この一体感。


「いやいや、違います」


 俺は後退ると、コツン、と革靴に固い物が当たる。

 振り返ってみると、そこには青い制服を着たガタイのいい男の人が立っていた。


「所までご同行願おうか」


 さっきまでいなかったのに、どこから警察の人が?

 最悪のタイミングで出て来た。

 さっきいたら、痴漢の男の人に声をかける前に警察の人に相談したのに。


「いや、俺は、その今日面接で、しかも、俺は何もしてなくて、こっちの人が……」

「あー、はいはい。分かった、分かった。話はちゃんと聞くからねー」


 全然話を聞いてくれない。

 無線でお仲間を呼んでお仲間の警察の方も駆けつけ、俺は強制的に連れて行かれた。

 何度説明しても納得し貰えず、せめて面接する会社に電話させて欲しいと願ったがそれもさせてもらなかった。


 数時間にも及ぶ取り締まりが終わり、会社の人に電話をかけるとキレ気味に、


「もう結構です、ウチとは縁がなかったみたいですね」


 と、強引に電話を切られた。

 こちらの遅刻の原因を素直に言ったせいだろう。


 痴漢に間違われたっていうのも嘘っぽいし、本当だとしても痴漢に間違われるような行為をしていた不審者だと思われたのだろう。


 また一から就職できる会社を探さないといけなくなってしまった。

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