第二章 出立、そして次の街へ 2
アリアナ達が住む始まりの街は、『思いやりの街 ベロナ』
ラーレ‥わかりやすい名前で言うと、チューリップの精霊の街である。
思いやりの街といわれている通り、街の人達はみんな優しく柔らかな雰囲気を纏っていて、街と同じ名前を持つ精霊のベロナ様もとてもおだやかで優しい方だ。
私は、出立式を終え街のみんなに別れを告げた後、最後にベロナ様の神殿へ訪れていた。
《あらアリアナ。もう出発するのね。いつも来てくれていた貴女がいなくなってしまうととっても寂しいわ‥気をつけて行ってくるのよ?帰りを待っているわ》
昔から変わらぬー私自身としては初めてお会いするのだけど、アリアナの記憶があるのでー優しい微笑みで、ベロナ様は寂しそうにベビーピンクの髪を揺らす。
ウィルはアネモネの侵略が始まってから勇者に任命されたのだが、アリアナは幼い頃から母の後を継いで街の巫女になることが決まっていたため、ベロナ様には何度もお会いしている。私の記憶ではないのに、しばらく会えないと思うと、不思議と胸が締め付けられる気がした。
「ベロナ様、私は必ずウィル達と共にアネモネから世界を救ってみせます。そしてまた、全員でここに戻ると約束致します。だから‥それまで、何卒お元気で‥。」
私ーアリアナの言葉なのだが、ややこしいので今後も私と記すーが真っ直ぐにベロナ様を見つめて言うと、ベロナ様は微笑みに少しだけ悲しげな色を織り混ぜて、わずかに瞳をそらした。
ゲームではもちろんわからないし、アリアナも気付かなかったベロナ様の少しの表情の変化。もう全員で帰ってくることは叶わないと、この時点で知っていたからこその変化なのだろうと、なんだか少し泣きそうになった。
そんなわずかな変化を一瞬でしまい込み、この街を守る精霊の顔になったベロナ様が
《アリアナ。勇者ウィルや仲間達と共に全ての神殿をまわり、力をつけ、愛情の街・スカーレットボニカで勇者ウィルと誓いの儀式をかわしなさい。
そして互いの真名花を交わし、大いなる力を手に入れアネモネを討ち滅ぼすのです。‥貴女方なら出来ると、信じていますよ。
ラーレの精霊、ベロナの名の元に貴女へ力を与えます》
といい放つと、沢山のラーレ(チューリップ)の花が私へ降り注ぐ。その花達を吸収し、私のネックレスについている4つの白い花飾りのうち、ひとつがサーモンピンクに染まった。
《‥これで貴女は回復の魔法・ラーレブレシングが使えるようになったわ。魔法は、使うほど強くなり進化していくから、今後の旅に役立ててね。》
「はい、ありがとうございます。ベロナ様の期待に応えられるよう、精一杯巫女としての努めを果たして参ります。」
両手で作った花を相手に向け、その手をそのまま口元で組んで目をつぶり軽く頭を下げる‥言語化するのがだいぶ難しいこの世界の挨拶をして、初めての儀式は終わりを告げた。