第二章 出立、そして次の街へ 1
さて、ゲームだと出立式の様子を見ながら世界観の説明が入るのだけど、勿論現実にはそんなものはないので、偉い方のありがたーいお話をうすらぼんやりと…いえ、しっかりと聞きながら自分で世界観のおさらいをする。
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昔々、神話の時代。
西風の神・ゼピュロスと、花と春の女神・フローラという一組の夫婦がおりました。ゼピュロスが起こす春風を受け、フローラの神殿の妖精達が用意した花々が咲き乱れることで春を呼んでいたのです。
しかしゼピュロスは、フローラの侍女である妖精のアネモネに密かに恋心を抱いておりました。
アネモネの花がいつも真っ先に咲くことで、ゼピュロスの特別な感情に気付いてしまったフローラは、嫉妬心にかられてアネモネを神殿から追い出してしまいました。
追放されたアネモネはもう二度と、花を咲かせる力を使うことが出来ません。毎日毎日泣き暮らし、日に日に弱っていくアネモネを不憫に思ったのか、それとも側に置きたかっただけなのか‥。
ゼピュロスはアネモネを花の姿に変えてあげたのでした。
ここまでは神話の中のお話。
フルールファンタジアでは、まだ続きがあるのです。
それから長い年月がたって、フローラは、その年特に美しい花を咲かせた花の妖精達に命じて、この世界に5つの人間の町を作り、それを総称して『エアリーフローラ』という国としました。どの町もフローラの加護を受けており、一年中花が咲き乱れる美しい町ばかりです。
花に変えられたまま、長年憎しみばかりを募らせていたアネモネは
楽しそうに花を咲かせる妖精達を、勝手に愛して勝手に自分を花に変えたゼピュロスを、自分を追放したフローラをどうしても許せませんでした。
募り続けた憎しみの力で花から邪神へと姿を変えたアネモネは、毒を持っていることで人々から嫌われていた花の妖精4人と様々な虫達を集めて、この世界を滅ぼすために動き始めるのでした。
アネモネからの攻撃を受け始めて慌てたフローラは、各町から勇者と巫女を選ばせ、5つの町の神殿を回りながら力をつけ、アネモネを倒すようにと神託を下したのです‥。
というのがフルールファンタジアのプロローグ。
これ何度見ても思うんだけどさ‥アネモネ別に悪くないよね‥?
いや、書いてないだけで、もしかしたらゼピュロスとの間に不貞の事実があったりしたのかもしれないけどさ‥
‥‥もしそうであっても、一番悪いのはゼピュロスよね?
なぜ女って、浮気されると浮気相手の方に怒りが向くのかしら‥。靡いた男が一番悪いに決まってるのに。
何てどうでもいいことまで考えが波及していたら、どうやらそろそろ出立式が終わるみたい。
「未来の大英雄達一行に、フローラ様の加護があらんことを!」
この町の町長の言葉で、出立式はしめくくられた。