第9話 陛下とお漏らし聖女白姫。
下ネタいっぱいです。嫌いな方は観覧しないで下さいませ。
◇◇◇
王宮は、中も真っ白。時々見る肖像画にルーセル王子に良く似た大人が居る。結構な美丈夫だったりする。
「…殿下に似ていらっしゃる。かしら?」
「ああ、先代の王。私の祖父上の若かりし頃の姿絵、と訊いている。いい男であろう?」
「はい、惚れますね。」
「!…惚れるぅ私に?」
「何仰ってますの?素敵なのはお祖父様ですわ。で、エステル殿下のところはまだですの?」
「いや、先ずは謁見だ。」
「……はあ?謁見んんん?誰が誰に?殴っていいかしら?」
「ったく、暴力では何も解決しないし、得る物も無いぞ。リコリー嬢。」
「あああああああーーー!なんでよおおおーっ。」
◇◇◇
「国王ノルベール三世ご入来ーーー!」
真っ赤な髪の美丈夫が現れ、玉座に座った。顔はルーセルに良く似ている。ルーセルの髪は金髪だから、母親…お妃様に似たのだろうか。
「因みに、私が国王になると『ルーセル一世』だ。ルーセルの名で王になった者は皆無なのでな!」
―――ふふんっ。と自慢気に鼻を鳴らすルーセル王子。
臣下の礼を取った姿勢で、そんなことを言うものだから、何となく憎まれ口を叩いてしまうリコリー。
「じゃあ、王様になれないのね?そう言う名前だったのよ王様になれない名前ね。ざまぁ」
「な、なんだとぅ!もう一度言ってみろっ!只じゃすまぬぞっ!!!」
「ははーん!ああー良かったぁ、貴方を『陛下』とか畏まって呼ばなくて済むのねー!うっれしいわああーーー!!」
「くっ!もう許さんっ!!」
「お?ヤる?剣術も魔法も負ける気しないのだけどぉー!」
「静かにせぬかっっっ!陛下の御前であるのだぞ!」
「「はっ!」」
「まぁ良い良い宰相。昔から言うでは無いか、『犬も喰わぬ』と…」
「だ、誰が夫婦ですかっ!冗談ではありません。」
「そうです父上。こんな白髪女、こっちが願い下げです。このお漏らし暴力女がぁぁー!」
「んだとぅ。このうつけバカ王子!万年次席があっ!」
謁見は、「後程…」と言われた。
今更ながら、ガクガクブルブルと自分の行いに恐れを成している辺境伯令嬢リコリーは、王女エステルの部屋に居る。
「エステル殿下。ご加減は如何ですか?そのぉ、薬物をしっかり排除出来なくて……。」
「そう、ね。まだ、禁断症状?と言うのかしら…。時々身体がガタガタ震えるの。でもお医師様が仰るに、数ヵ月もすれば元通りになると……。だから暫く休学するわ。折角、リコリーさんとお友達になれるかと思っていたのに…残念ですわ。」
「滅相もございません。わたしのような者など……。謁見の間でやらかすし…」
「あら?私は貴女の高潔で気高い様を何度と無く見ていたような気がしますよ?その潔癖な魂を感じていましたの。聖女様。」
「いいえ、わたしは俗物です。現にお金儲けとか考えて…。」
「リコリー・ブランシュ製作所でしたかしら?それでも、それでも貴女は、マリーを救ったではありませんか。貴女の素性を晒してまで……。本当に感謝しております聖女ミセリコルディア様。」
「ん?ミセ…何ですか?ニセコ?温泉スキー?」
「いいえ、おそらく貴女の本名です。『ミセリコルディア・ロクサーヌ・ド・ソレイユ』。帝国での貴女のお名前です。帝国で貴女は聖女としてお暮らしだったようです。
これはマリーの書いた調査書です。お持ちしてお読み下さい。」
「では、わたしは…、しかし、そのニセコ?その方の記憶がありません。どうしたら…どうしたら良いのでしょう?あ、いや、身の振り方を王女殿下に尋ねて、どうなる物でもありませんね。申し訳ございません。」
「いいえ。リコリーさん、貴女の為になるのなら私、協力も致したく思っているのです。どうかお頼り下さいませ。」
「……殿下、リコリー様。お茶に致しましょうか?」
「ああっ!シェットランドシープドックさんっ!」
「コリー、……マリーです。」
「古伊万里とか、とても高級っぽい焼き物ですわ。マリーさん、随分とお身体、お加減がよろしそうで安心しました。良かったですわ。」
「先日はありがとうございます。殿下に命の恩人である、とお教え頂いております。―――その生憎と、記憶がありませんもので……。ですが、時々、胸が痛くなって…」
「胸、とか、おっぱいのお話しは結構です。それよりも刺さったクナイの破片が残っているのかしら?そのー大変申し上げにくいのですが…、治した後、体内に残った異物は取り出せませんのっ。」
「サー」っと血の気が引く侍女マリー。
おまえ、死にたかったのではないのか?
「まあ、成り行き、とは言え、『聖女』であることが王都の我が臣民に知れ渡った訳で、帝国にバレるのは時間の問題。と、言うより、既にバレています。
さて、今後なのですが、リコリーさん、どうなさいますか?一つ私から提案、なのですが、、、婚約してお城にお住みになりませんか?」
「……え?エステル様とわたし、結婚するのですか?―――――どうしよう。あ、あのう。喜んでっ!」
「…あのですね。至極普通に考えて…。考える迄も無く、婚約するのはリコリーさんと私、では無く、ルーセルです。私の双子の兄です。」
「ええー!あの弱っちいヒョロガキですか?」
「ですが、あのくそガキ…。く、ルーセル殿下は貴女様思って毎夜毎夜、自慰をしておいでです。それ程までに好いておられるのです。」
「キモッ、つか、そんな情報いらないです。」
「ですが、リコリー様を使う前は、双子の妹君であるエステル様をお使いだったのです。」
「マジで?妹君を?オナネタに?うわあああーーー,!変態、ですの?実の妹をオナペットにしていた王子…引くわあぁぁぁ。」
「物理的にも被害が御座いまして、姫様のドロワーズが…」
「ドロワーズが…」
「ドロワーズが紛失しました。
発見後、洗濯下女はそれはそれは大変困惑して泣いているのを見た覚えがあります。洗うのに難儀していた様子でした。」
「その犯人、ぶっ殺しましょう!」
「その犯罪者なのですが…リコリー様の後ろに立っております。」
「ひっ!」
「…確かにオナネタにしていた、かも知れぬが、私も健全な思春期男子故、致し方なかろう。」
「「「開き直ってる!?」」」
「だが、『婚約』と言うのは、リコリー嬢に取って、良いことだと思うのだが?」
「良い、とは?」
「帝国の貴女の叔父、今の公爵である『シャルル・アルチュール・ド・ソレイユ』から王子の婚約者として、リコリー嬢を守れる。と言うことだ。」
「でも、でもそれは、それはルーセル殿下は、望まない婚約ではありませんの?」
「いいや、私の望みだ。」
「でも、只の辺境伯の令嬢で、家格だって、所作だって、とても王子様に並べるような女性では無いし、身体だって義手で、白髪頭で、美しさだって周りのご令嬢の方が……。」
「リコリー嬢。何を言っている?立ち振舞いも美しさも貴女は全て持っている。妃に欲しいと望むのは私だけでは無い。実際、貴女を妻に迎えたい、と考えている男子は多いぞ?なあエステル。」
「はい、お兄様の仰る通り、リコリー様を妻に…と考えている殿方が学園にかなりいらっしゃいます。これだけの容姿ですもの、品格、武人でいらっしゃる所為でしょうか。洗練された立ち振舞い。同級の一年生だけではなく、四年三年生の殿方も時々、教室に見に来る位ですのよ?数多くの殿方のオナペットになっていることでしょう。」
「……エステル止めて。ホント、悪かったと思ってる。。。」
「そうですよ姫様。ルーセル殿下は、今やリコリー様をお使いです。」
(ここ数ヵ月の記憶が無くなったはずなのに、意外といろいろ知ってるのねマリーさんは……)
などと思いながら、マリーの報告書に視線を落とすリコリーであった。
視線を向けた先にあった名前……殺害されていた侍女『ローゼリア』。(……ローゼリア?ローゼリア。)
「ローゼリア。。。ぁぁぁぁ、ぁぁああああああ!ローズ!ローズ!ロォォォォーーーーズゥゥゥゥうああああああ!!!」
「どーした?リコリー嬢!?」
「姫っ!王子!退避です!!」
―――ドオオオオオオオーーーーーンンンッッッ!!!
一瞬で部屋が吹き飛んだのだ。エステル王女の部屋に落雷でもあったかのように音と閃光が迸ったのである。
そこに残っていたのは、片腕の無い真っ白な全裸の少女只一人であった。