第55話 竜帝聖女白妃戴冠。
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元辺境伯領の国境警備の兵士三千強は帝国国軍に編入され、現在も鉄道建設に従事している。
養父である辺境伯、今は侯爵であるも、陣頭指揮の為工事中。
そして、帝都ブレ、皇立ブレ学園も今月名称が変わる。
町は『エスカリエ』。学園は『帝立エスカリエ学園』と
名称を変えるのだ。
雪月の15日にミセリコルディアの戴冠式が行われる。
どうしてこうなったのか分から無いのだが、戴冠式を牧場で取り行われることとなった。
何故?寒いと思うの。ちょっと臭いと思うの。
そして、その為の線路が敷かれ、会場は着々と出来上がって行くのであった。
大きな大きな二階建ての家位あるような姿絵が、三枚も用意され、市場の入口。南門に飾られ、と言うかプアロ商会の絵師達が描いた。プアロ、お前んところだけ儲かって、良いのか!
もう一枚の姿絵は特設会場へと運ばれてた。
新年の参賀、謁見もほぼ終わり、今は神殿で、炊き出し、癒しを行っている。
白い修道服に大会した灰色剣、左上腕の黒剣。何時もの出で立ちのミセリコルディアである。
◇◇◇
戴冠式の前、安息日。何時もの炊き出しなど行っていたミセリコルディアの前に、幼女が問い掛ける。
「せいじょさまぁ、わたしもせいじょになりたいの。どうしたら、なれる?」
「こればかりは神様のお決めになることですの。」
「じゃあ、ミセリひめさまみたいにひめさまになれる?」
小さな幼女がミセリに問いかける。………子どもは無邪気なのだ。
「そうね、わたしとかににならなくても、貴女はきっと、何方かのお姫様になるのですよ。」
「ウチの娘が、申し訳ございませんです!!」
「いいえ、よいのです。お名前を教えて下さる。小さな淑女さん?」
「クロエ。」
「そう、ではクロエに祝福を!」
暖かな淡く眩しい光に包まれた二人。
少女クロエは、この瞬間願いが叶って仕舞った。
「………… 。クロエさんごめんなさい。聖女にしちゃったのだわ。どうしましょう!お父様お母様、申し訳ありません。このままでは、クロエさん、聖女のお仕事をしなくてはならなくなりましたの。」
――――――エエエエエエエェェェーーーーー!
「あの、どう言うことなのでしょう聖女様!?」
「近いうちに、なるべく早くに案内をお出します。小さな聖女クロエ。」
「あたし、せいじょ?ミセリひめさまといっしょのせいじょなの?」
なんと言う聖人の力の発現でしょう。これは偶々で偶然にクロエと言う子どもにこの偶然な『奇跡』を与えて仕舞った。と言うことなのだろうか。
なんの気無しに新しい聖女をちょっと、製造してしまったミセリ。
困惑して休憩です。
そんな、ミセリコルディアを見る新枢機卿であるジャン=ベネディクトが一言。
「出鱈目がすぐるぅ!」
◇◇◇
雪月の15日。戴冠式当日である。
教皇アンドレ・ドゥギャ 、教皇アンドレ14世より、戴冠されるのである。
なる程、会場は綺麗に整地され臣民も大勢入れるようになっている。汽車でのピストン輸送に時間迄の間、軽くお茶の飲めるスペースもある。
寒く無いようあちこち焚き火もある。
家畜の臭いを押さえるよう、牛舎などは閉じられ、香が焚かれている。
壇上の上に来賓である各国の王族、公家の人々。そして、聖女ミセリコルディアとこの間誤って聖女にしてしまったクロエも傍に並んで座って居る。
「ミセリコルディア・ロクサーヌ・ド・リコリー・ブランシュよ。私の前に跪くきなさい。」
クロエはミセリの長く大きな赤く縁が白と銀糸で飾られたいファーのマントを持つ係だ。
「……………。」
赤いベルベットに沢山の宝石、貴金属が付く中で目を引くのは、ミセリコルディアの目と同じ色の翠玉。
大きなエメラルドだ。
ミセリコルディアは跪いたまま、教皇倪下の手ずからの冠を頭に載せられる。
「これにより、皇帝ミセリコルディア一世としてこれを神が認め、新たな帝が誕生したものとして宣言する!」
切な、大歓声と拍手が上がる。
その上の空から竜達が白い花びらを撒くのだった!
そしてミセリコルディアが立ち上がり、民衆を左手で制するのだ。
歓声は静まる。そして宣言するのであった。
「わたしが皇帝ミセリコルディア一世である。我が臣民よ良く聞け!ここに宣言しよう!わたしこそが、コンティナン亜大陸は下より、この世の支配者である!」
と。
帝都は、止むことを忘れたように大歓声は大きく響き続くのであった。