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白姫さまの征服譚。  作者: 潤ナナ
第二章 一節。
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第41話 公爵令息はため息をつく。


◇◇◇


 あの安息日、ミセリコルディア一世の護衛であった騎士団の五人は、結局散々に叩きのめされた。と言う表現が適切であろう位であったと、他の騎士から伝え訊いた宰相ソレイユ閣下。


「なる程ねぇー。やっぱ頭いいわ。ミセリ陛下ぁー。」

「なんでしょうカロリーヌ様。―――ああ、これ面白いですね!」

 と先日受け取った帝都の『案内図』と意見書を見ているのだ。

 まぁ、実際意見書とは言っても、正式な書式ではなかった為、直ぐに宰相の手には渡らなかったのだった。

 後になって、皇帝陛下の字だと気付いた文官が慌てて直接閣下に手渡ししたのである。


「明日の朝議に即、掛けましょう。」

「陛下が、『で、あれはどうなりましたの?』ってここ毎日訊かれて来るんですが、てっきり牧場の人員のことだとばかり…。」

「わたくしは、鉄道の人夫募集のことかと……。ですから順調です。と。」

 宰相カロリーヌと補佐官アリエルは、ため息をつくのであった。



◇◇◇


 遡ること二週間前、塩湖の視察から帝都へ帰還した一行。


 その一人であったベルナールは、『男の心を食い倒れ』の三人と馬車で営巣地に来ていた。勿論(ドラゴン)の、である。


「どーですかあぁぁぁー!殿下ぁー!生きてますぅ?――――死んだかぁ。帰りましょっか?皆さん。。。」


「――――ぃ。ぉーぃ。おーい!助けろ!……助けて下さいぃぃぃベルナールぅ。」

「チッ、生きてましたか殿下。何処です?――――分からないので、かえります。」


「お願いだぁぁぁ。助けてよう!」

「はあーしょーがないです。ペーターさんすみませんがお願い出来ますか?」


『良かろう。ま、お前が営巣地に来たら解放するよう(あるじ)に言われておるのでな。』

 とペーターは言うと子竜を咥え出した。

 子竜と言えど体長3メートル弱程もある。玩具にされて(じゃれついて)いたルーセル王子はたまった物では無い様子であった。


「殿下、閣下……。カロリーヌ様からの伝言です。口頭で、とのことなんで言いますよ?って、いい加減泣き止んでくれます?」

「ぅぅぅぅ。。。ヒドイよぉベルも、リコリーも…」

「違います。ミセリコルディア陛下です。」


「でもっ、だから皆、酷いって。何故私がこんな目に会わなければならないのだぁ?何故、そのミセリはこんなに冷たくなったのだ!?酷いよぉー。。。」

「……殿下、貴方は何時迄、そうして自身の我が儘をお続けに、なられるのです。何時になったら自覚をお持ちになるんですか!ミセリ様はもう王権の中です。いいえ、皇帝として民意を汲み、不正を許さず、覇道を進んでおられます。」


「でも、まだ私は14だ。」

「そう言う問題ではありません。貴方は何時か言いましたね。『覚悟を持ちたい』みたいなことを……。」


「言った。ジャンが殺された後に……。」

「あの方は、我々が考えてるより過酷だったのですよ。肉親が殺され親しい者が目の前……しかも、殺したのは叔父上です!僕訊いたんです。叔父上とミセリ様の関係を。『良く抱っこされて散歩したり、遊んでくれたりしてたの』ですって。訊いたら泣いちゃいましたが……。」

(うわあー、マジこの坊っちゃん、空気読まねぇーなぁ。オメェも少し配慮とか遠慮とか覚えろやぁ!)


「まぁ兎に角、彼女、養女だし、義手の維持費とかの負い目があって、お金を養父母に払う為に会社作ったって、他の人が言ってましたよ。あー伝言でしたね。同じような意味ですけど。

 『きちんと先を見据えて生きなさい。国を預かる人になるのなら、周りを見て前を向いて歩きなさい。』です。」

 そして「それとこれ」と言ってノルベール三世宛てた二通の手紙を手渡すベルナール。


「……ん?お前、帰らない、のか?」

「ええ、新たに、と言いますか改めて留学することにしたって、ブレ家へ手紙送っていますし、父にも承諾して頂いておりますし……。」


「ホントに?じゃあ私も…」

「いい加減にしやがれってんだっ。王子さんあれだー甘ったれんじゃねぇよ。オレぁー10ん時っから冒険者稼業やってんだ。なんでか分かるか?誰もだぁれも居なかったんだよ。助けてくれる親、家族、町、国。だから手っ取り早な冒険者になったんだ。つか、学も金も後ろ楯も居ねぇオレが今日のメシ食うのに冒険者になるしかなかったんだよっ!

 クソッ嫌なこと思い出させやがって。あれだ。オレらでこのボンクラ王子鍛えてやる。ベルの坊っちゃんは安心して励みな!じゃあな。」


「俺達がみっちり鍛えてやる。」

「おーよ、覚悟しなぁ。なあ坊っちゃんよぉ。頑張れな!んじゃアバヨ!」

 ルーセル王子は三人に引き摺られるように馬車にのせられ、故国の方角である西に向かったのであった。



 ベルナールであるが、実は実家であるブレ家からの手紙を待っていた為、と言うかその所為でルーセルの救出が、3~4日遅れたと言うのは内緒である。


 まぁ、バレても、もう馬車の人。「問題無いな?」と呟くのであった。



◇◇◇


 そんなルーセルとのやり取りから二週間後、ベルナール・ド・ブレは、建設途中の城で、朝議に出ている。

 いや、参加させて貰ったのだ。

 『蒸気機関』に興味があって、実際どう言う物かは理解していたし、問題点も既に考察済みであった。


 朝議は、円卓で行われている。

 身分役職関係無し、と言うことなのであろう。

(こう言うのって、ミセリ嬢の考えなんだろうな。後、皆に渡された紙、『ガリ版印刷』って言うヤツ。あれアイディアも嬢だし、書いてあるのは予稿集って言ったな。なる程、あれなら余計な時間使わないもんなぁ。凄くねミセリ嬢。)

 ベルナール、心の中では陛下呼びしないのである。なる程、ルーセルもバカ呼ばわりし始める訳だ。普段からそう呼称していたのかも知れない。


「――――以上が、陛下の提案です。皆様如何でしょう?皆様。」

「そのう、何故我々では無く、先に庶民、臣民に披露すると言う話しになっているのですかな!」

「そうです。おかしくは無いですか。パーティー会場で披露する筈の物を!」


「伯、挙手の後発言を。ああー、そう仰られるのを陛下は予想されておりまして、少々時間を掛けて調べておいででした。」

「い、一体な、何をお調べか、」

「だから、挙手を、とフロア伯。それに何も皆様を探って、とは一言も言っておりません。ご安心を、今回は……ですが。」

(うわぁ怖っ!)


「陛下がお調べになったのは、各国の間者(スパイ)です。いやぁー、驚きますよ。」

 と、司会進行役のアリエル補佐官が、侍従に配るよう頼んだ用紙。それを見た数名が、納得したように言う。


「だから、ここ数日ルラック候がお見えでなかったのですな。」

「ですな、まさか教国が間者を放っているなどとは……、と言いますか、周辺国全てではないですか!これは、いや、これ程とは……。と言うか、ルラック卿が、教国と繋がっていたのですか?」


「皆様。話しを戻します。で、今回はお披露目を『どうせ何処も真似出来ない技術だし、見せないから見たくなるの(みゃは♡)』とウザく仰れておりまして、見せると言う方が他国を圧倒出来るし、国力差を見せ付けるには良いだろうと……仰られました。」

「わたくしも賛成です。当初は反対だったのですか、と言いますのも。そのぉ――――わたし(わたくし)恥ずかしいですのっ!」

――――はあああぁぁぁー!???オマエぇ何言っちゃってんのぉぉぉーーー!意味分かんねぇぇぇーーーー!???


「でも、だってぇ、宰相って広報みたいに説明したりって、人前にぃ出るじゃ無い?普通ハズいとか思うじゃんっ!あれケッコゆぅーき要るのよぉー!」



 朝議に出ていた皆が思った。「こいつ何言ってんだ。」と………


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