第36話 聖女白姫の帝国。
◇◇◇
「風の聖霊さん、わたしの声を城全体に響かせて!」
と、新しい臣下の前で、ミセリは囁く。
「さあ皆様、一分以内にこのお城の北の斜塔が崩れるかも?ですわよ。出来れば人死にの無いよう、『無血会城』致したく思いますの。ちゃんとお逃げになって下さいまし。
『黄昏よりも昏きもの、血の流れより赤きもの、時の流れに埋もれし、偉大な汝の名において、我ここに、闇に願わん、我等が前に立ち塞がりし、全ての愚かなるものに、我と汝が力もて、等しく滅びを与えんことを!ドラゴスレーーーイヴゥゥゥ』!!!」
――――ピカッ」パーティー会場にいても解る程の閃光あり、少し遅れて、
――――ドゴオオオオーーーーーンンンン。と言う音、続いて「ミシミシ………バギバギバギ…がらがらがら」
――――ドオオオオオオオオオオォォォーーーンンン!!!
「崩れてしまいましたようです。陛下。」
と、カロリーヌ。
「やり過ぎでは。」
と、ローズ。
「良いんで無いッスか?」
と、残念エルフ。
「そうね。明日一日掛けて更地予定ですもの。」
「陛下。具申致すことお許し下さい。」
「許す、申せ。」
「今後の予算に成ります故、換金の効く物は予め他所へ移すべき。と。」
「解った。では即刻始めようか。」
「ま、待てっ!どう言う、どう言うことか?余を無視するでは無い!!!」
「まーだ解って無いのがいるぜ陛下ぁー。」
「こらアーデ不敬です。きちんとした言葉遣い教えましたわよ。」
「申し訳ございません。まだお分かりになれれて………なられていらっしゃら無いようです、如何致しましょう陛下。」
「説明が必要ですの?クレマン。」
「な、な、なんだ不敬である。この女、ミセリを打て!首を飛ばせーーー!!!」
だが、衛士隊の剣がミセリに届くことは無く無駄に剣を消費するだけになったのである。
全ての剣が粉微塵になった頃、慌てた口調の兵が報告するのだった。
「北の、城の、北、北が半壊致しましたーーーー!!!斜塔がポッキリとお、折れて………雷で!」
「どう言うことかーー!!!」
「こう言うことですわ。雲よ踊れっ!」
―――ドオオオーーーンンン!バリバリィィィ。。。
会場の一部が崩れたのだ。
「おまっおまえがやったのか?」
「ええ、そろそろ処断致しましょうか?ソレイユ公爵を叙爵させた人は誰かしら?貴方ではなくって?」
「だ、だが、しかし……。」
「シャルル叔父では無い方をお選びになられるべきではありませんか。あのように襲撃者の疑惑が最もあった人物でしたのに。叩けばホコリだらけですのに………。ああ、そうでした。『天使の卵』かしら?臣民に蔓延でしたわね?皇族も絡んでらした。と言う訳ですわね?
では、新たな皇帝が命じます。元皇族を不法薬物の売買に関与、またはそれらを知る立場にいながら黙認した罪により、一人残らず引っ捕らえよ!これは皇帝の勅命である!!!」
「「「「「「ハッ!」」」」」」
衛士達も思うところがあったのか、はたまた違法な薬物と知りながら見過ごしていたと言う後ろめたさからなのだろうミセリを新たな主人と決めた様子だった。
クレマン五世だった者は牢へと連れて行かれるのであった。
「姉上。姉ぇぇぇーーー!!」
「聞こえております。何ですか。はしたない。」
「これは、これは一体どう言うことになったのです!」
「全く、解りませんの?新たにこの国の主人におなりになられたのです。ミセリコルディア様。ミセリコルディア陛下が。解りましたか?我が愚弟。」
「だ、だが、継承権は、リコリーに継承権などと。」
「まだ解りませんの?これは国盗り。この帝国を乗っ取った。と、そう言うことです。
まぁ、仮に継承権が無くとも、皇帝にはなったでしょうね。事実上皇帝になられるのですから………。継承権などミセリ陛下には無い方が良かったのですが、ミセリ様の母上は皇妹でしたの。まぁ、降嫁されてますから微妙なのですよねえ。。。
さあ就職も致しました。明日から頑張って宰相致しましょうか!」