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白姫さまの征服譚。  作者: 潤ナナ
第一章 一節。
3/87

第3話 白姫と殿下。


◇◇◇

「それでね白姫様。」

「その『白姫様』って言うの止めていただけないでしょうか『グレース様』。」


「うーーん、わかったよう悪かった、白姫ちゃん」

「あ、白姫は続けるのですね?」

「うん、これは譲れない。寧ろ広める!」

(ああダメだ。)早々に諦めたリコリーである。


「で、ね白姫ちゃん、どうして上級貴族用の個室が足りないのか?と言うと、今年度の入学生、新入学生に王族の方が二名いらっしゃるの。一人は姫殿下。五階の公爵令嬢用のお部屋がぶち抜きで王族用のお部屋になったの。当然しわ寄せ的に公爵侯爵令嬢用の四階三階の個室は埋っちゃったって訳。おかげでグレースと白姫ちゃんは仲良し同室な訳なのよ。

 ところで白姫ちゃん、お着替えとか自分で出来るの?個室が良かったのは、侍女がお着替えに必要だったのではなくて?」

「あ、着替えとかって侍女がいなくても出来ますし、一通り自分の身の回りのことは出来ます。そう躾られて来ましたし、片腕になって、もう七年ですし、、、それに、この義手、凄いんです。五本とも指は動くんです。高性能な義手です。」

「チッ!」

「…先輩、なんで『チッ』って舌打ち?」


「気にしないで、白姫ちゃん。そうね、今日みたいにお風呂だけは私にお手伝いさせて!ね?」

「…今日みたいに、悪戯しないで下さい。グレース先輩。」

「でも、だって、その方が大きくなるのよ?」

「『でも、だって』は要りません。わたし、明日から一人で入ります!」

――――ええぇぇぇーーー!あ・ら・わ・せ・て・ー!!!



◇◇◇


「おいオマエ、何故手袋をしているのだ?」

(入学早々、絡まれちゃったぁー。)


「はい?あのうわたし、でしょうか?」

 貼り出されたクラス表の通りに教室の席へ着いたリコリーであったが、早速隣に座ったブラウニッシュブロンドの少年に声を掛けられ絡まれた。

 どうにも不機嫌そうにイラついた声色なのだ。


「この私がわざわざオマエに向かって声を掛けているのだから、オマエ以外の誰に向かって言っているのか分かるだろう!?白髪(しらが)の令嬢。」

「お答えしてもよろしいのでしょうが、生憎名も名乗れぬような方とお話をするような人間ではありませんので……」

 一応、リコリーなりに、この不躾な少年へ可愛い抵抗を試みたのだが…、


「ああ、礼に欠いたのであれば謝るが、私はこの国の王子である。臣下へ礼など不要であろう?」

「はあ、殿下の治めるお国には礼節を軽んじ、只臣下だから民草だからと見下すのですね?殿下の治世が訪れた際は、わたくしは帝国へでも亡命致します。若しくは、国外退去をお申し付け下さいませ。」

「ぶ、無礼であろう!オマエ名をなんと申す。」


「畏れながら、名を名乗りもしない方に名を名乗るなどと言う矜持は生憎と持ち合わせておりません。」

(やっちゃったあああーーー!王子だよお、殿下だよお、どうしようどうしよう!もう引けないし、引き際が解んないいいいーーー!助けて!誰か、誰でもいいから助けてえええーーー!ああああぁー口答えとか口答えしちゃったしいぃぃぃーーー!!!)

 まさか、王子だとは思わなかったリコリー。不敬罪とか、不敬罪とか、不敬以外頭に浮かんで来ないのである。


「ふむ、、、確かに私が不躾であった。あった、かも知れん。私はリヴィエール王国第一王子、ルーセルだ。して貴女の名は?」

 仕方なく、右隣の席に座るルーセルに身体を向けるリコリー。


「はい、お初にお目文字致します。ベルジュ辺境伯が息女リコリー・ブランシュと申します。重ね重ねの無礼をここにお詫び致します。」

(ああー良い落とし所を用意して頂けて、殿下ありがとう!)


「して、何故手袋をしておるのだリコリー嬢。」

 危機が終わっていなかったことを再認識したリコリー。義手であることを告白しなければならないのだ。

 教室にいる生徒の空気は、確実にリコリーと王子のやり取りを「注目していますよー」っと言っている。

 どうせ早かれ遅かれバレるのだ。

 それが原因になって、虐められることになるだろう。仕方だない、どうせ老婆のような髪色だし、欠陥品の淑女に求婚するような、そんな奇特な殿方など世の中にいるはずも無いのだ。

 どうせ『傷物』なリコリーなのだから……。


「殿下、、、ルーセル殿下。わたしが手袋をしているのは、回りの方々への配慮の結果なのです。手袋の中は、とても見て気分の良い物ではありません物で、」

「だが、リコリー嬢。オマエの肌は白磁器のように美しいではないか。腕だって絹のようなのであろう?それとも日焼け防止の為か?それならば両の腕も手袋を着けるべきであろう。」

「殿下、恥ずかしながら、わたしの右腕は、作り物なのです。人の、人の手ではありません。お目汚しになりますので…、お見せすること事態、気分を害するのでは、と、、、」

(ああもう!なんか涙が出て来たし、、今更、今更悲しくなるなんて!って、これってアレだ、「わたしバカだから」って自分で言っててるのに、いざ他人に言われると頭来ちゃうヤツに似てる?あはははぁー!うん、悲しく無い、泣く必要無くなった。おおー涙も引っ込んだあー。)


「うおおおーーーっ!何だこれはぁー!カッコイイではないかあぁぁぁーーー!!何故、何故隠す?何故見せぬぅー!黒くて固くてメタリックぅぅぅーーーー!!!」


「って、なに勝手に手袋取ってんだようっっっ!」

―――ガンッ!ガラガラ、、、バタン。


「キヤァァァァーーーー王子が、殿下がふっ飛んだぁぁぁーーー!!!」

「医務室、医務室へ!」

「衛兵さん!早く殿下をぉぉぉーーー!」


「殿下が殴られましたぁぁぁーーー!!!」

「王子ぃぃぃ!お気を確かにぃぃぃ!!!」

―――――あーーー終わったわぁ、わたしの学園生活。


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