第23話 竜と聖女白姫。
ちょっと下ネタ入りです。嫌いな方は見ないで下さいませっ。
◇◇◇
翌朝、洞窟の隅っこで小さく寝ていた妖精さん。
覚醒して暫く呆けていたのだが、思い出した。
「何て、畏れ多いパーティーッスかぁ。震えが止まんねぇッスわ!」
と、呟くのであった。
それが聞こえたのであろうリヴィエール王国第一王女カロリーヌ殿下16歳、今はカロンだが、
「そんな端に居ないで、わたくしの毛布にお入りなさい。」
などと、畏れ多いことを「サラッ」っと宣う物だからアデルハイト、アーデは恐縮し捲り捲りで、キャパオーバー。
倒れた。
そんなに寒かったのかしら?と王女は思った。
アーデが次に目を覚ましたのは、王女様と一緒の毛布の中でした。
◇◇◇
「解呪出来る?」
マリーが訊くと、ミリディアは「コテン」と首を曲げ、周りを見渡す。
「あの、おハゲ様。お亡くなりになられたので、何処にどのような呪いの器具、若しくは魔方陣ですわね。何処に仕掛けたのかしら?」
「あ、あのっミリディア様っ、せ、僭越ながら、あそこ、の丘の上辺りにの、呪いの波動が、感じられます。」
「アーデ様、そのように恐縮されては、パーティーの仲間として、どうなのかしら?それに、わたしの方が年下なのですから、、、」
「ま、前屈みに努力致します!」
「それ思春期の男の子の表現よ?と言うか、お友達になれると思っていたのだけれど………。」
「あ、あたしと、ですか?まさか!」
「ホントよぉ。あ、でもお姉様って呼んでみたいのだわぁ。」
「あたしが、お姉さん?」
「ええ、学園……、王都のプレスキール学園ってところの学生寮でね。同室だった方がいらっしゃるのだけど、毎日、お風呂でわたしの髪を洗って下さるの。とっても甘やかして下さるのよ?
それなのにわたしの老人のような白髪を褒めるの。『朝の雪のように綺麗』って。こんなおばあさんみたいな頭をよ?」
「あのグレース嬢、そんな羨まけしからんことをしてたのですかっ!」
「あ、はい。グレース先輩が何時も頭と身体を洗って下さっておりました。」
「でも、ですが、ミリディアさ………ちゃんの髪って、綺麗だとあたしも思う。初めて見た時、あんまり綺麗なんで、見とれたんですよあたし。」
「今度、グレース嬢に会ったら立場を弁えて、私に譲りなさい、って言わなくてはっ!」
第一王女が不穏な発言をしている。
「でもね………」
とミリディアは右手の手袋を外し義手をアーデに見せた。
「それは?」
「うん、義手。わたし右手失くしちゃったの。こんなだからお嫁に貰って下さるかt………」
「何だぁーこれぇぇぇ!カッケーじゃん!!いいなぁぁぁーはああああーーー!!!こんなカッケーの、何で早く見してくんなかったのぉぉぉーー!スッゲーカッケーじゃん!!てか、あれぇ軟けぇぇぇ!?何、これ、巻き付いてるの??教えて教えてっっっ!!?」
何でしょう?この既視感は………。
「ルーセルと同じですわね。」
「ルーセル殿下と同じですわ。」
カロリーヌ…カロンとアリエルが同じ感想を言う。
「ルーセルってどなたッスかぁ?」
アーデの普段の口調はこんな感じなのだ。と、地が知れた。そしてミリディアの中の『エルフ=妖精さん』のイメージが崩れ去った瞬間でもあった。
「ルーセルは私の弟です。リコリーちゃんの義手にすっかり惚れ込んで、リコリー……今はミリディアちゃんですね。ミリディアちゃんに求婚している最中だったの。ねぇーミリディアちゃん。」
「王女様の弟……、王子様、ですかぁー?ってミリディア…ちゃん、王子様と婚約してたッスかぁ??」
「いいえ、婚約すら断っていらっしゃいましたし、それに良く喧嘩をして何時もルーセル殿下を右手で殴っては、地下の反省房に入れられておりましたね。」
「マリーさん、口調が元に戻っておりましてよ?それに何時も反省房に入っているようなこと言わないで下さい。そう言うミスリードはいけないと思います。反省房に入ったのは五回だけです!」
「王子様を殴ってた?何時も?何それ?やっぱカッケーッスゥ、ミリディアちゃーんっ!」
何だか変にクダけたアーデであった。
「あたし、冒険者やって二年目でさー、お貴族様ってぇのは、何時だって馬車とかで移動するじゃん?だから、ぜってぇー足腰弱いって思ってたッス?何スか?四人供歩くの早いって!あたしより、早いって?どう言うことなんス?
待ってよぅカロンさんアリエルさんマリーさん、ミリディアちゃんっ!!」
こうして丘の上に登った五人。
丘の下。谷間になったようなところに竜の巣がある。
その営巣地の真ん中をアーデは指差した。
「きっと、あれだと思うッス。あれが呪いの元ッスね。」
「いやぁー、随分クダけちゃって、エルフって皆そうなのかい?」
ちょっとクダけ過ぎじゃね?と、マリーは言おうとしたのだが、「これ位でいっかぁー。」と思うようにした。
営巣地の真ん中に、石碑のような物がある。それを見たアーデ以外の四人が、
「物理ね。」
「ええ、物理ですわ。」
「物理で、」
「直接、物理ですの。『階梯』関係無いですわ。」
などと、言い。カロンが、
「問題は、竜の営巣地のど真ん中ってことね。どうするリーダー?」
と、ミリディアの答えを待った。
ミリディアは、「そぉねぇ。」と言いつつ走り出す。丘の下へと。
「や、槍も剣も何も無いのに行っちゃったぁー!カロンさんどうしようミリディアちゃんがぁぁぁー!!?」
「大丈夫よ?剣はあるの。」
と言う。三人供、落ち着いて推移を見守っているのだった。
――――ええええぇーーー!そんなぁぁぁー!!!
っと思ったアーデさん。営巣地中央にたどり着いたミリディアの右手の義手のギミック、剣が「シャキーン」と伸びたと思った一瞬、石碑のような呪いの魔具が、バラバラに砕けるのだった。
――――うおおおぉぉおおぉぉーーー!!!カッケー!つか、カッコ良さ過ぎぃぃぃ!!!
「何スか?何スか?ミリディア、カッコ良スゥゥゥ!!」
と叫びながら、ミリディアの居る営巣地に入ってしまったアーデである。
あたりまえだが、竜だらけ。
「危ない!」
と思ったカロン、アリエル、マリーの三人の手はアーデに届かなかった。
その時。
『主が我らを呪縛から解放したのか?』
と言う渋めのおじ様のようなお声がした。
『我は、ここ……人間的に言えば、営巣地と言うのだろう。ここの雄。リーダーとでも言うのであろうな。まぁ代表者だ。主は?』
「わたし?こう言う時って本名を名乗るのかしら?」
『む、その方が良い。』
「ミセリコルディア・ロクサーヌ・ド・ソレイユ。ですわ。」
……。
………。
『………スマン、長過ぎだ。もっと短くお願い。』
「ミリディアで。」
◇◇◇
ミリディア達が、北の海で竜との邂逅を楽しんで居る頃、王都のプレスキール学園の一年A組で、ルーセル王子はしょんぼりしていた。
前期期末試験で、学年一位になったのだが、それは、リコリーがいなかったからなのだ。と言うことで、王子自身も頑張ったのだけれど、やるせない。
オナペット不在で、さみしい。とか、そう言うことでは無く、単純に喧嘩友達が居なくなったのだ。
だから、寂しい。
騎士のジャン、殺されていたジャン。
リコリーと同室のグレース嬢の言う通り、リコリーは襲撃者排除の為、状況に対処したのだろう。「凄い」とルーセルは思う。
襲撃者に躊躇無く、立ち向かえる少女。
自分は?と考える。
「私には、覚悟も勇気も無いのだな。」
「ルー君、普通13歳で覚悟も何も無いのがあたりまえです。リコリー嬢だけですよ。そんな傑物。
ところで、殿下。リコリー嬢の足取りですが、王都の北へ向かったようです。白髪の少女と、黒髪の女性、女性は十中八九エステル殿下の侍女ローズ=マリーでしょう。今はおそらく、北の港、『サン・エレオノール』に潜伏しているのでは?と思われます。」
◇◇◇
「へえええ~~~、じゃあ皆奥方様ですのぉ!?ハーレムですのねぇ。」
『そうだ。はぁれむと言うのが何かは知らぬが、他の雄どもは、我の兵だと言っても良い。序列は一対一で戦って決めているのだ。そう言う意味で今、ミリディア殿の序列は二位である。あの赤竜が序列二位であったのだ。だが、主が勝った。文句無しで主が二位である。が、我には分かる。主は我などより上位であると。』
「そんなあー!持ち上げ過ぎです。竜様ぁー!」
と竜とのお喋りを続けるミリディアは、ちっとも潜伏などしていなかったのだ。