第22話 聖女白姫とダメなヤツ。
◇◇◇
「我は竜帝、我に従えば、この大陸の半分をお前達にやろう。つまり、我の妻になるのだお前達がっ!!!」
(ああーこれあれだ。ダメなヤツだわぁ。)
ミリディアの瞳のハイライトが喪失した。
現在、ミリディア達は、サンレノの街から船で半日の島に来て居る。
冒険者ギルドからの依頼で、『竜島』と呼ばれる無人島に来ているのである。
人は住んではいないが竜、つまりドラゴンが、営巣している島なのだ。
これ迄、人を襲ったりしなかった竜が、ある日を境に人を襲うようになったのである。が、何故か商船、ばかりを襲うようになった。
つまり、金目の物を狙っているのではないか?と言うことらしい。
で、新米だが、実力はある『オセロの疾風』に『島の調査』のお鉢が回った。と言う経緯であった。
アデルハイト、アーデが、瞠目していた。何故なら初めて三枚羽の扇風機、スクリューを見たのだから。
船は、ミリディアの扇風機を改良したスクリューを着け、海の上を滑るように走って行くのである。
「ああ、これね?リコリー、、、ミリディアちゃんの会社で作ってる『扇風機』って言う物よ?」
「ミリディアさんって、まだ13ですよね?」
「そうよぉリコリーちゃんの会社、『リコリー・ブランシュ製作所』って言うのよ!」
と胸を張るカロリーヌ……カロンであった。
「張るお胸があっていいわね。。。」
と、一人ごちるミリディアであった。だがその横で、自身の胸に手を当て、ため息を付いてしょんぼりするエルフがあった。
失礼だが、親近感を覚えた。失礼だが…………。
冒頭に戻る。
「我は竜帝、我に従えば、この大陸の半分をお前達にやろう。つまり、我の妻になるのだお前達がっ!!!」
などと宣う、五十代後半位の男性。
「お爺様、無理に虚勢を張らなくても良いのですわよ?」
「失礼なっ!我は、二十代であるぞ?」
「「「「「そんなにハゲ散らかしているに!???」」」」」
五人全員で見事にハモった。
「………くっそーっ!!!こうしてやるぅ!1号、あの女どもを殺って仕舞えっ!!!」
すると、1号呼びされた赤い色のドラゴンが、ブワァッっと大きく羽を広げてミリディア達に向け飛び掛かって来たのだ。
体長はどの位なのだろう。10メートル以上ありそうだ。
ミリディアは、半日全力の魔力でスクリューで回していたのだ。魔力は、ほぼすっからかん。
「少し足りませんが、、、」と言いつつ、市場の武器屋で購入したばかりの石付きから全て金属で出来た槍。その槍を赤竜目掛け投げ付けた。
「刃は雷(電荷は負から正になれっ、なったぁー。)放て!」
―――――ズドオオオオオオォォォンンン!
投げた槍に雷が落ちた。槍は丁度、赤竜の鼻先に刺さっている。なんとも間の悪いことに赤竜が自称二十代の男の上に落ちた。
ハゲは潰れた。
「呪い、でスね。この子達………竜達、と言うか、島全体に『呪い』が掛けられてます。」
「そう言うの分かるりますの?アーデ様。さん、エルフだからですの?」
「あ、いいえ、そう言う訳では無いッスが……、でも、解呪って、第五階梯以上の魔法師でないと、なんです。あたしは出来ませんアリエルさん。」
「あたいも出来ねぇケド、リコ……ミリディアちゃん出来んじゃね?」
「マリー、すっかりその口調になったのですね。まあ、ミリディアちゃんが起きてからですわ。」
魔力切れで、倒れたミリディアを抱きながら、カロンはそう言って、顔に掛かった白銀の髪を手梳で梳かすのであった。
夕方になる頃、ミリディアは目を覚ました。
今、季節は冬。神月、12月も終わりなのだ。
島、竜島の海岸線に奥行きはあまり無いが、洞窟があった。
マリー達、侍女´s が集めて来た流木、あまり島の奥へは行かなかった。と言うか竜に遭遇したら、いろいろ面倒なので、少し拾えた木の枝などを薪として、火を起していた。
洞窟の中は暖かくなった。
「もう時期に新年です。お城での参賀もございましょうに、臣民に向けた挨拶も…………はっ、このアリエル、失言でした。」
「お城?参賀?挨拶?え?」
「もう頃合いでしょう。わたくしから話しますわ。ミリディアが聖女、と言うのは知っての通りなのですが………」
当然。アーデは、ぶっ倒れました。
だって、王女様とお付きっぽい二人が各々、侯爵令嬢と伯爵令嬢だって言う。
ミリディアに至っては、本来の『女公爵』だって言うのだから、どんな上流階級の垂れ流しなのでしょう?状態ですもの、意識を飛ばして当然です。
アーデが起きた時、夕食を作るミリディアが見えた。
「―――ちょっ、ちょっと何をなさっていらっしゅいますミリディア様!」
――――噛んだ。噛んだわね。噛んだね。噛んでたエルフ。
「何って、夕餉よ?まあ作っている。と言いたいのだけれど、これは煮てるだけ、よね?」
「お貴族様が、そんなこと……そのようなことをされては困りましゅ。!」
――――エルフ噛んだ。噛んだわ。噛み噛みね。面白過ぎですわエルフ。
「貴族も何も、同じ冒険者仲間ですの。わたし達。」
「良いのですよアーデさん。」
「王女様まで………。つか、何でこんなにも畏れ多いパーティーに声を掛けてしまったのかしら?
あの時のあたしに一言言いたい。関わるな、違う世界の人間だ。と…………。」