第20話 新加入者と白姫。
◇◇◇
「冒険者の階位について………」
先ず最初、普通はギルド登録時に、『黒』と言う初期レベルになる。階位が上がると、『紫』、更に、『緑』で、『赤』『青』『銀』。そして、最高位の『金』となるのだと言うルノー。
大抵の冒険者は『赤』辺りでうろちょろしている。と言う話しだ。
ミリディアさんはいきなり、アージェントです。
「物理攻撃、剣と槍だけで、そのぉー、『銀』で、良いかな。本当は『金』レベルだが……」
最後の方は呟くように言ったので、聞こえなかったが……。などと言うギルドマスターのルノー。
その位、凄いのがリコリー、ミリディアなのだと思うマリーであった。
尚、二人きりではあるのだが、『パーティー名』を決める必要があるのだ。と受付嬢が言う。
受付さん、「疾風のオセロ」と言う名を提案した。
何故、そんな名を思い付いたのか訊くと、
「だって、ミリディアさんってば瞬殺だし、マリーさんは元から言われてたでしょ、『即効マリー』って、仕事早いから、ねぇ。それにマリー様、髪色赤っぽいけど黒いし、妹?さん白いし、リバーシっぽくない?だから、『疾風のリバーシ』よ。良くない?銀✕銀なのに白黒のパーティーなのよ。少し位カッコいい名前でもいいのでは?」
「表も裏も使えるはずなのに、結局表しか使えなかったり、とても美しく可愛いヒロインが残念なことにリバースする。ですから、そこはかと無く使用したく無い名前です。
ですので、オセロ、が良いですね。『オセロの疾風』でお願いします。」
「ええ、それでお願いいたしますわ。」
「(…ますわ。って、何処のご令嬢様?)で、では、その呼称で登録致しますわ。(ああ、感化された!)」
と、そんな訳で、『オセロの疾風』と言うパーティー名を持って、宿に着いたミリディア。
「凄く美味しいお肉です。ですが、何故ウェルダン、なの?わたし、ミディアムで頼みましたのに。」
「ああ、オークの肉だからですよ。良く焼かないとお腹を壊すんです。」
「……豚人間?あの魔獣の?」
「はい。」
「良く平気で食べられますわよねマリー。(キュリンッ)」
「ホンっとウザイです最近。ええ、平民はそんなの気にしないのです。食うか食われるか、弱肉強食の世の中です。って言うより、庶民はその日その日を必死で生きているのです。ですから、食べられる物は食べる。と、そう言うことです。」
「マリーは、貴族なのでしょう?」
「いきなり話題を変えますねぇミリディア。」
「(モグモグゴッキュン♡)ホントのお名前訊かせて?」
「いちいちウザイ擬音出さないで貰えます?名前……でしたね。ローズ……」
「ローズ……。」
何となく、気落ちした様子のミリディアだったが、気にしても仕様が無いので、気が付かない振りをしてマリーは続けた。
「ええ、ローズ=マリー・ニコル・ド・シードル。姫様からは、『マリー』と呼ばれていますが、家族や家の者からは、『ローズ』、と呼ばれております。」
「そう、なの。ひょっとして貴女、わたしに気を使ってお名前明かさなかったのでは?(パクッモグモグ…)」
「マジウザイんですけど……。まぁ、そう言うつもりもありましたが、名前なんて『マリー』でこと足りていましたし…」
「ねえ、『シードル』ってお林檎で有名な『シードル伯領』ではなくって!?」
「よくよくコロコロと話題を変えますね。林檎ですね。良くご存知で、、、私はシードル伯爵家の二女です。行儀見習いを兼ねて王宮に、プレスキール学園に通いながら入ったのですが殿下、エステル様に気に入られて、侍女を続けておりました。」
「(ゴキュン)そうでしたの。では、ローズ様、とお呼びした方がよろしいのかしら?
それに魔法も凄く上手ですのね。」
「分かりますか。やはり貴女は凄い。然り気無く遮音したつもりでしたのに。。。つか、擬音ウザイです。今まで通り『マリー』で、、、
それにしても、あの日初めて直接お会いしたばかりでしたのに、私が暗器持ちで、双剣使いだと看過されましたし……」
「って、貴女、記憶戻ったの?」
「あ、はい。ここ何日か前に……。あの夜、『リコリー・ブランシュ製作所王都支店』で、ミセリコルディア……リコリー様とお会いした時、何故か、『この方をお守りせねば。』そう思ったのです。
このサンレノに来る途中、馬車に揺られてうたた寝をしている時にあの日も含めて、記憶が、こうブワアっと、走馬灯のように頭の中に広がって、真っ白な少女が血に濡れながら、淡くて優しい光を私に……。
ですから、私の命尽きる迄、貴女に使えさせて下さい。私の命は貴女の物なのです。」
「あら、良いお話しね。」
「!遮音しているはずなのに!?」
「そんなものわたくしに係れば造作も無いのですわ。」
「で、殿下!カロリーヌ王女ぉ!」
「淑女がそんな大声を出すものではありませんよ?マリー。」
「そうですよ。他のお客様が、何事かと見ていらしてよ?はしたないですわ?」
「アリエル様迄……。どうして………。」
「どうしても何も、貴女方、リコリー、今はミリディアでしたわね。ミリディア様の動向を探るのに理由なんてありませんわ?わたくしとアリエルも『オセロの疾風』に加えて頂きます。」
と、第一王女カロリーヌは、その見事な迄の赤髪をかき上げるのであった。
◇◇◇
翌日の昼過ぎ、冒険者組合に入る四人。
どうやらマリーは有名人のようで、名も知れているらしいのだが、入って来た四人は各々美人であったり美少女であったり、良くも悪くも目立つのだ。
「よお、そこのねーちゃん、こっちに来て酌でもしてくんない?」
などど、定型文な物言いを投げ掛けられた。
――――シュザッ、チンッ。
四人の内、炎のような赤髪の女性が定型文男に近付き、左腰に帯同する剣の柄を握っていた。
その定型文男の手に持っていた木のコップが真っ二つになって中の飲み物がテーブルを濡らしているのである。
「!…このお、ヤるかぁー、あ?うわあー!」
男は立ち上がって赤髪の女性に掴み掛かろうとしたのであろう。が、立つことすら出来なかった。
もう一人のストロベリーブロンドの女性のナイフが、男の顔……正確には右目の前にあったのだ。
「わたくしの王女を害する物は、全て滅します。命を持って償うのです。」
「すすす、スイマセン。。。」
「分かれば良いのです。次はありません。」
と、華々しいデビューをした王女カロリーヌとお傍付きのアリエルであった。