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白姫さまの征服譚。  作者: 潤ナナ
第一章 一節。
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第10話 借金聖女、白姫。


◇◇◇


 辛うじて難を逃れた双子の殿下と侍女マリー。


「リコリー様は、聖女であり、魔法使いでもあるのですよね?おそらく、魔力と聖力が暴走したのではないでしょうか?」

「あれ程のお力、物凄いですわね。」

「ああ、私も驚いた。そこからあっち迄、全て吹き飛んだ。リコリー嬢、本人は無事であろうか?」


「私が見て参ります。」

 マリーは嘗てエステルの部屋であった場所へと走って行った。

 暫くして、


「姫様あああーー!大変でございます。外に!中庭に落ちております!」



◇◇◇


 夢を見た。

 酷く、辛い夢。目の前が真っ赤に染まり、親しい彼女が倒れた。血に濡れた剣を叔父が握っている。次はミセリコルディアの番だ。


「――――――っ、ここは?」

「…城の客間だ。これで拭くが良い。」

 と、ハンカチを手渡されるリコリー。寝ながら泣いていたようだ。


「…殿下?」

「ああ、ルーセルだ。リコリー嬢、『ローズ』とはなんだ?オマエが叫んでいた言葉だ。」

「…ローズ、、、ローゼリアは、わたしの傍付きの侍女です。…侍女だった方です。とても親しくしていたお姉様のような人、でした。」

「そうか。大切な人であったのだな。」

「はい。」


「わたし、全て、思い出しました。」

「…ああ、確か、記憶が無い。そのように姉…カロリーヌ、私の姉から訊いている。リコリー嬢は、同室のネージュ子爵家令嬢に記憶が無いことを伝えておったのだろう?」

「はい。ですから、『リコリー』はそのローズ…侍女のローゼリアに呼ばせていた愛称、だったのです。他の者、家族には『ミセリ』と呼ばれておりました。」


「ミセリコルディア、であったな。名前。」

「殿下の仰る『白髪(しらが)』は…」

「あまり私の心を抉るな。…そのだな、本当はリコリー嬢の髪は雪のようで美しい、とても似合っていると、思っているのだ。素直に褒めるのが、気恥ずかしい、と言うか……すまない。」

「あっ、殿下!畏れ多いです!そのように頭を下げるなどと……王族のお一人なのですから……そのっ、お止め下さいませ。」

 慌てて、止めようと手を出すリコリーであったのだが、出すはずの手が無いことに気が付く。


「…あ、れ???手、無い……」

「ああ、あの爆発でオマエの着衣も何もかも吹き飛んでな。そなた自身も中庭迄吹っ飛んでしまっていたのだ。」


「…殿下、お話し中申し訳ありませんが、お持ち致しました。」

「おお!仕事の早いことだ。我が城の文官は優秀であるなあベルナール!」

「殿下、それは?」

「ん?ああ、リコリー嬢へ我が王宮からだ。」

 ルーセル王子から渡された、その三枚綴りの紙。そこには、『煉瓦』『大理石』『木材』『絨毯』『ドア』等々、建材等が箇条書きになっている。

 つらつらと項目を流し見て、三枚目の下段にはこう記入されていた。


 【金貨4千5百枚】


「殿下、これ、何ですの?」

「一番上に書いてあるであろう?『請求書』、と。」

「誰に請求?」

「エステルの部屋もオマエの身に付けていた服もその義手も全て吹き飛んでな。請求は、リコリー嬢、オマエに決まっておる。―――あっ、辺境伯宛てであろうか?ベルナール。」

「はい、リコリー嬢は未成年でありますから、請求されるのは保護者である辺境伯です。」

 そして再びリコリーは意識を手放した。



◇◇◇


 翌日、目を覚まして昨日のことを思い出し、悶絶するリコリー…ミセリコルディアであった。

 ミセリコルディアは少し長すぎる名前なので、今まで通り『リコリー』でいいや!と私思う。

 リコリーがベッド上で頭を抱え……片腕が無いので左手を頭に乗せているところにエステル王女と傍付きの侍女マリーが客間…リコリーが使わせて貰っている客間へと入って来た。


「おはよう。リコリー、それともミセリコルディアかしら?」

「長いので『リコリー』で。。。おはようございます。エステル殿下、アフガンハウンドさん。」

「マリーですリコリー様。」

 と侍女マリー。


「リコリー様、プレゼント。」

 エステル王女が言うと、マリーが長い包みをリコリーに渡した。


「開けても?」

「ええ、きっと貴女の欲しい物よ?」

 なんだろーと包みを開けようと、したのだが生憎、片手なものだから開けられない。包みはしっかりと結んであったのだ。

 困惑して、「ジィッ」っと膝に乗った贈り物を見つめるリコリー。

 「あっ」っと気が付いた王女が「失礼」と言いながら、包みを開けてくれた。

 中に白い肘上まであろう手袋と、そして義手が入っていた。


「…これ?どうして?全部吹き飛んだって、ルーセル殿下が…」

「ええ、全裸で瓦礫と一緒に落っこちておりましたわ。当然、義手も粉々。」

「でしたら、何故?」


「リコリー様の先日行った工房へ使いを出しましたら、辺境伯領の鍛冶師様から預かっていた。と言うお話しでしたわ。」

「リコリー様の成長具合が分からないが、おおよそこんなものだろう。と言うお話しでしたね殿下。」

 成る程、少し大きい気もする。だが、素直に嬉しい。のだが……。


「金貨五枚と銀貨三枚とのことでした。」

「!!!」

 そのマリーの言葉で一気に青ざめるリコリー。

――――また借金が!


「あっ、リコリー様。ですから、プレゼント、と(わたくし)言いましたわよ?お金は私がお出ししておりますから、ご安心下さいませっ!」

「…ああ。」

 と、胸を撫で下ろすリコリーであった。

―――ストンッ。。。

 何故だか、涙が出た。


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