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白姫さまの征服譚。  作者: 潤ナナ
第一章 一節。
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第1話 拾われ令嬢と先輩。


◇◇◇


「こんにちは。私ネージュ子爵家の長女、グレースよ。同室になるのだから、仲良くしてね?」

「は、はじめまして。わたしリコリー・ブランシュ・ド・ベルジュです。ええと、ふ二人部屋、だったのですね。」


 今日から寮生となるリコリーであったが、まさか一般寮だとは思っていなかった。

 一般部屋には子爵子女以下の生徒が入居、伯爵子女以上は個室、と訊いていた。

 案内書にも明記されていたはずなのだ。

 入寮の案内書には、『五階は王族、公爵家。四、三階は侯爵伯爵家。三、二階が一般寮生』と、確か書いてあった筈だ。

―だから何の構えもなく案内された部屋を開けて見れば、ブリュネット美人なお姉様が「こんにちは……」なんて言うものだから、リコリーは少々、驚いたのだった。


「ところでリコリー…、ちゃん。リコリーちゃんでいいわよね?リコリーちゃんって辺境伯のご令嬢だから、個室だと思ったのではなくて?」


「え…、ええ、そのつもりでした………。」

「でしょー!私なんかと一緒のお部屋でガッカリでしょうけど…」

「あ、いいえ、一人ぼっちではないのは、その、寂しくない、と言いますか…寧ろ先輩と一緒のお部屋で嬉しいのです……。」


「嬉しいけど、困るのよね?」

 そう言いながら、リコリーのブラウスの襟口を右手で「パパッ」っと払うグレース先輩。


「な、何を…」

「リコリーちゃん、個室ならシャワー室付いてたって思ってたのでしょう?」

「あ、えっ?」

「リコリーちゃんの『染め粉』、あまり質の良い物ではなさそうね。ブラウスの襟、茶色くなっているわ。

 貴女、髪色知られたく無いのでしょ?――――でも残念ー!お風呂行きましょっ。同室者の親睦よー!リコリーちゃん今日から寮生でしょ、案内するわよぉー」

 グレースはリコリーの左手首を掴むと、有無を言わさず寮の廊下を走るのであった。



◇◇◇


「グレース嬢!淑女たる者としての振る舞いを忘れていらっしゃるご様子ですね?」

「う、わぁぁぁ寮長様ぁ。申し訳ございません!以後、気を付けますぅぅぅ」

「…よろしい。貴女も先輩になるのですから、気を付けて下さい。」

「ハイ」

 そこから、シズシズと歩きだすグレースであるのだが、


「寮長…カロリーヌ先輩、けっこう厳しいの!リコリーちゃん気を付けてね。」

 などと余計な一言を口にしたものだから…

「グレースさん聞こえていましてよ?後でわたくしの部屋にいらっしゃい」

 寮長カロリーヌ嬢のお小言を訊く予定が出来てしまうのだった。



 浴室は一階の食堂を抜けた厨房の奥にあるのだとグレースは教えてくれた。厨房とお湯炊きのボイラーを共有しているのだそうだ。

 その為か、脱衣場は廊下の一番奥にあった。


 リコリーには、あまり他人に知って欲しくないことが二つある。

一つは、髪の色。

 もう一つが……

「リコリーちゃん、お風呂入るのに上着脱がなきゃ!―――あのね、小さくてもいいのよ?そう言うの、好きな殿方もいらっしゃるの!それにリコリーちゃんは成長期ってヤツでしょっ!大丈夫大丈ーーー夫よ!?さぁさっ、脱ぐわよー、エイッ!!!

「…………あ……。」

 瞠目するグレースの目に写るソレは黒い硬質な金属だった。

 リコリーは大きな目に溢れだす涙を拭うこともなく俯いたまま脱衣場の床にペタンと座り込むのだった。


「…ごめん。何かごめん。貴女を困らせたかった訳じゃないの。只私、仲良く出来たら…って思って……。ごめん」


「――――あの、謝らないで下さい。グレース先輩は何も悪くないですし、それに、まだ、暑い季節です。いずれ皆さんに知れることだと思います。何時までも隠し通せる物ではありませんし、、、只、気味悪いですよね?右腕が義手の令嬢なんて……。それだけじゃないんです。わたし髪の毛、白髪(しらが)なんです。」


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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろいです! また読ませていただきます!!! [一言] 是非、私のも読んでみてください!
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