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カエル

作者: 知美

 蛙の卵の周りには先に産まれたおたまじゃくし達が集まってまだ卵の中にいるおたまじゃくしを眺めている。

「何時産まれるかな?」

「そのうち産まれるんだからそっとしといたら?」

「そうだよ。」

 産まれるのを待っていると卵の中の1匹のおたまじゃくしが動いて膜を破り田んぼの中に出て来た。

「ぷはッ。今日からよろしく。」

「よろしく、仲良くしようね。」

 おたまじゃくしは卵から産まれると沢山の仲間達と仲良く田んぼの中を泳ぎ始めた。


◇◆◇◆◇


 産まれてから1週間ぐらいすると田んぼの中を隅々まで泳ぎ回ったらしく田んぼの中を案内できるぐらいになっていた。

「ねぇ、パパとママは何処に行っちゃったの?」

「う~ん、居心地の良い所に行ったんじゃないか?」

「そうかぁ、それ何処かなぁ?」

「わからないけど、夜になるとゲコゲコ聞こえてくるの知ってるか?」

「うん。」

「時々なんだけど何かの中に入って鳴いてるらしく鳴き声が響いてここまで聞こえるんだ。だからその鳴き声を頼りにそこまで行けば何かわかるかもしれない。」

「そっか。ありがとう。どれくらいで外に行ける様になるかな?」

「う~ん、あと3週間ぐらいかな?」

「その時が楽しみだ。」


◇◆◇◆◇


 それから1週間ぐらい経つとおたまじゃくしは足が生え始めていた。

「見て見て足が生えたよ。」

 おたまじゃくしは自慢げに泳いで見せた。

「よかったな。」

「うん。」

「俺はもう少しでしっぽが無くなるから先にあの鳴き声がする方に行ってみる。」

「そっか。僕もしっぽが無くなったらそこに行くからそこでまた会おうね。」

「あぁ。」


◇◆◇◆◇


 あれから3週間ぐらい経つと先に産まれていたおたまじゃくしは蛙になり何処へでも自由に行ける様になっていた。

「じゃあ、先に行ってるな。」

「うん。寂しいけどあの鳴き声が聞こえる所でまた会おうね。」

「あぁ、またな。」

「うん。」

 先に蛙になったおたまじゃくし達は自分の行きたいところへ跳んで行った。


◇◆◇◆◇


 お兄ちゃんがあの場所へ向かってから1週間ぐらい経つと漸くしっぽが無くなり蛙になれた。

「やっとあの場所に行ける。あっ、あの鳴き声が聞こえてきた。」


 ゲコゲコ、ゲコゲコ。


「何の中に入って鳴いてるんだろう。お兄ちゃんは元気かな?」

 蛙は鳴き声が聞こえる方へ向かって行った。


◇◆◇◆◇


 あの鳴き声が聞こえる方に行くと木が鬱蒼と生えてる場所にたどり着いた。

「お兄ちゃんとパパとママは何処かな?」

 3匹の蛙を探しながら辺りを跳び回っているとお兄ちゃんが葉っぱの上に止まっていた。

「久しぶりだね。」

「久しぶり。無事にここまで来られたようだな。よかった。」

「うん。」

「あの田んぼで産まれたおたまじゃくし達は蛙になって殆どこの場所にいるからパパとママも直ぐに見つかるさ。」

「本当? って事はパパとママもここに居るんだ。」

「あぁ。田んぼに居た時鳴き声が凄い響いて聞こえてきた理由がここに来てやっとわかった。」

「そうなの? 教えてよ。」

「ぅ~ん、一緒に見に行くか。」

「うん。」

 蛙はお兄ちゃんと一緒にパパとママを探しに行った。蛙はお兄ちゃんと一緒に行動できるのが嬉しかった。


◇◆◇◆◇


 ゲコゲコ、ゲコゲコ。


「あっ、聞こえてきた。」

「そうだな。」

 葉っぱから下り鳴き声が聞こえた方へ向かうとジョウロが見えてきた。


 ゲコゲコ、ゲコゲコ。


「まさかあの中にパパとママがいるの?」

「ジョウロに近付いて中を覗いて見ればわかるよ。」

「見てくるね。」

 蛙はジョウロ目指して跳んで行き中を覗いた。すると持ち手の部分に蛙が居た。

「あっ、パパと……、ママは?」

「ここよ。」

 声が下の方から聞こえた。

「あっ、ママ。会いたかった。」

「結局あの田んぼで産まれたおたまじゃくし達はみんな蛙になったらこの場所に来たわ。」

「そうなの?」

「えぇ。理由はパパに聞いてみたら?」

「教えてくれるかな?」

「大丈夫よ。」

「パパ教えて。」

 蛙が声をかけるとパパが嬉しそうに理由を教えてくれた。

「あの田んぼで産まれたおたまじゃくし達が蛙になったらみんなで歌を歌いたかったんだよ。」

「そうなの?」

「そうだよ。みんなで合唱すると楽しいだろ。それにジョウロの中で歌うと響いて遠くまでよく聞こえるから、みんな集まって来る。」

「そっか。」

「今日も歌うからお兄ちゃんに歌を教えてもらいなさい。」

「はい、パパ。」


◇◆◇◆◇


 蛙はジョウロから出てお兄ちゃんが居る場所まで跳んで行った。

「理由わかったか?」

「うん。だから歌教えてくれる?」

「これからみんなで練習するから一緒に練習しよう。」

 練習を始めると田んぼに居た時に聞こえてきた声と殆ど同じだ。これなら歌えると沢山練習した。


◇◆◇◆◇


 夜になるとパパとママがジョウロの中から出て来て蛙たちをジョウロの前に集合させた。

「これから歌を歌う。仲間たちがここにきちんと来られるように願いを込めて歌うように。」

「はい。」

 するとパパとママはジョウロの中に入り歌い始めた。ジョウロの前に居る蛙たちはパパとママの後に続いて歌い始めるとここに来ようとしている蛙達がゲコゲコと鳴き始めた。蛙達は仲間たちが迷わないように夜通し歌を歌っていた。

「みんな、ありがとう……。」

読んで頂きありがとうございました。

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