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素手殺
『最強の座に興味のある方、ぜひ参られたし』
届いた手紙は、その一行からはじまっていた。
参加者は総勢十名。
WBCヘビー級元世界ランカー。
国内でも有数の空手道場の総帥。
万能家を名乗る総合格闘家。
現代格闘の舞台で突如実力を発揮した古流。
不世出の天才と呼ばれた柔道メダリスト。
……表の傑物は、ここまで。
――裏の怪物は、ここから。
相手の意すら掌にすると恐れられた合気の体現者。
戦場を渡り歩き幾多の屍を越えてきた傭兵。
裏社会で名を出すことを禁じられた伝説の借金踏み倒し男。
非合法なルートで対象の抹殺を請け負ってきた殺し屋。
触れれば崩し掴めば投げる人呼んで歩く暴風圏。
……集められた。
十人の強者が、集められた。
場所は絶海の孤島。
時は春を迎えようとするある日。
嵐に閉ざされた館の中で相まみえた彼らは、磨いてきた技を向ける先を得た。
はたしてそれが仕組まれたものだったとして、
まるで意に介さず。
はたしてそれが命を賭したものだったとして、
まるで気にもせず。
ただ、
ただひたすらに、
己の強さを、証明せんがためだけに。