きみの味方さ
「せっちゃんせっちゃん」
わたしはせっちゃんこと摂くんの名前を呟いた。
せっちゃんとは幼稚園のころからのお友達で近所に住んでいる。
男の子のくせして泣き虫なせっちゃんはいつもいじめられていた。
わたしは女の子のくせして虫も怖くないし、男まさりだ。
いつもいつもわたしが男で、せっちゃんが女だったらいいのに、と思う。
「せっちゃん」
今日、わたしは学校のそうじ当番で、せっちゃんと一緒に帰ることができなかった。
しまった、と思った。
だってわたしがいなきゃ、せっちゃんは他の子たちにいじめられる。
その予想はあたっていて、せっちゃんはまだ家に帰ってない。
だから私は家に帰ってすぐ、せっちゃんを探しに行った。
でもどこ探してもいなくて、公園や商店街も全部探したけど、みつからなかった。
ね、どこに行っちゃたの?せっちゃん。
ずっとずっと走り続けてるとのどがかわいて痛くなる。
汗で前髪がはりついて気持ちわるい。白のワンピースにも、汗がにじんでくる。
そのうち足も痛くなって、サンダルで来るんじゃなかったって後悔した。
「せっちゃん・・・」
もう、家に帰っちゃったのかな。
そう考えた。
日がしずみかけてちょっとうす暗くなってきてるし、これ以上外にいたら危ない。
おかあさんにも怒られちゃう。
でもでもでもまだせっちゃんが家に帰ってなかったら?
そしたらせっちゃん、1人になっちゃう。
もうちょっと、もうちょっと、そう思ってまた走りだした。
家から30分くらい離れた土手を走っていると、
ちんまりとした影があった。
「せっちゃん!」
川原までおりてって、せっちゃんに近寄る。
そしたら、せっちゃんは顔を土で汚しながら、ぽろぽろと泣いていた。
「ふみちゃん・・・」
ランドセルを背負ったままのせっちゃんはぎゅっとわたしにしがみついてきた。
体はふるえてて、きっと暗くなってく空をみて、怖くなってたんだろう。
「せっちゃん、どうしたの」
「・・・ふみちゃんがくれたきれいな石、かくされて・・・」
お誕生日にわたしがせっちゃんにあげた石。
せっちゃんは大事にしてくれてたあの石。
「さがしてたの?」
「うん・・・でも、見つからなくって・・・ごめんね、ふみちゃん」
よく見ると手も土で汚れてて、そこまで必死に探してくれてたんだ。
そんなにだいじにしてくれてたんだ。
わたしは、せっちゃんのこういうとこ、大好きだ。
「せっちゃん、上、みて」
せっちゃんは言われたまま上を見上げた。
そこには、きらきらとかがやく1番星があった。
「あったでしょ?きれいな石」
そう笑って、1番星を指差すと、せっちゃんはゆっくりと涙をふいて、笑った。
「うん」
せっちゃんと手をつないで、うす暗くなった町を2人で帰る。
せっちゃんの顔から涙は消えて笑顔になった。
せっちゃんがどんなに泣き虫で、みんなからいじめられたって。
私はいつでもどんなときも、
「せっちゃんの味方だよ」
(今じゃ、僕もふみちゃんの味方だね)
(私もあの時と変わらず味方だよ、摂っちゃん)
田舎の小学生をイメージしてつくりました。
石の話は、私が小学3年生のとき、友達と話した話をイメージして書いてみました。