祝いの席で、魔王と全能神は話したい!! そして、あわよくばピクニックへ!! 後編!!
久しぶりに、息抜き投稿させていただきました。勢いに任せ綴った文章ですが、楽しんで読んで頂ければ幸いです。
パーティー会場から抜け出した魔王は、会場を出て直ぐにある広場へと向かった。
広場の中心には噴水があり、夜景を彩るかのようにライトアップされている。魔王は、公園の片隅にあるベンチに座ると、ライトアップされる噴水を眺めながら物思いに耽っていた。
「はぁぁぁぁ・・・・・・」
魔王の口から不意に零れた大きな溜息は、誰に聞かれることも無く夜空へと消えていく。
「全能神さん、今日は一段と綺麗だったな。あわよくば、今日こそピクニックに誘おうと思ってたけど、話しかける事さえ叶わなかった。ていうか、まず人が多すぎな! 関係の無い貴族の豚どもまで来てたし・・・・・・てか、あの豚ども、馴れ馴れしく全能神さんに話しかけてんじゃねぇ!! 俺だって話しかけたかったのに、全能神さんが美しすぎて緊張のあまり近寄れないから、仕方なく遠目から眺めるくらいで我慢してたんだぞ!! それなのに、あの貴族の豚どもはッ!! ぶひぶひ、ぶひぶひと、全能神さんに纏わりつきやがってッ!! 領地事、魔王スキルの餌食にでもしてやろうか!?」
公園のベンチで、ブツブツと独り言を呟き続ける魔王の姿は、もはや魔王というよりも、ただの変質者である。
「前世では、自分の身体能力とかがゲームのステータスみたいに見れたら、俺だってもっと頑張れるのに! とか思ってたんだけど・・・・・・最近、そのステータスにも思う事が出来た。何故、ステータス欄にはコミュ力って欄が無いのだろうか? 筋力とか知力とかを数値化できるなら、コミュ力だって数値化しろよ!! 手抜きしてんじゃねぇぇぞ、神の野郎!!」
完全なる八つ当たりだった。コミュ力の鍛え方が分からない魔王は、ただただ、神を恨むのだった。
そして、魔王はこの半年で何度目かも分からない大きく深い溜息をつく。
「はぁぁぁぁぁ・・・・・・全能神さんとお話ししたい」
ぼそりと呟いた言葉は、魔王に最高で最悪の試練を与えたもうた。
「ま、魔王さん! こ、こんばんわ」
全能神、襲来。
魔王との距離、およそ二メートル。
挨拶を返そうと魔王は口を開くが、思いもよらない事態に思うように舌が回らない。
「じぇ、全能神さん!? こ、こんばんわ」
思わず噛んでしまった事により、魔王の顔は見る見るうちに紅く染まっていく。
――――や、やっちまったァァァァッッッ!?
出鼻を挫いてしまった魔王は、もはや家に帰って枕に顔を埋めたい衝動に駆られる。
それを見た全能神は、優しい笑みを浮かべ微笑んだ。
「ふふっ、驚かせてしまいましたね。ごめんなさい」
魔王に語りかける全能神は、慈愛に満ちた笑みを浮かべながら、優しく魔王へと謝罪の意を告げる。
「い、いや、こちらこそ、気を遣わせてしまったようだ。す、すまない」
顔を赤くしながらも、魔王は全能神に向かって小さく頭を下げた。
「い、いえ、構いませんよ。頭を上げてください」
そうこうしているうちに、全能神の笑顔が徐々に大きな歪みを見せ始める。
――――ヤバい、鼻血出そう。
何を隠そう、全能神は今にも鼻血が噴き出しそうなのを耐えながら、この数秒間、魔王との会話を行っていた。
全能神は魔王との距離が近ければ近いほど、話せる時間は短くなってしまうのだ。
時間は既に二十秒を越えており、全能神はかなり焦っていた。
――――ピクニックって、どう誘えばいいの!?
普通に誘えばいいのである。などと、普通の男女なら思うのだが、この二人は違う。
前世で、童貞と処女を拗らせオタクでヒキニートだった彼等は、デートどころか、友達と遊んだ事すらないのである。
故に、誘い方が分からないのだ。
「ま、魔王さん!」
「は、はい!」
先に仕掛けたのは、全能神。
「きょ、今日はお日柄もよく――――」
「そ、そうですね、見事なまでの星空が――――」
見事にテンパった全能神だが、魔王も負けず劣らずテンパっていた。
そんな話が長々と続くわけも無く、魔王と全能神の間に静寂が流れ出す。
その静寂の時間が、二人を今以上に焦らせていく。
――――今日の全能神さん、異常に可愛い過ぎ!! これ以上長引かせると、緊張でゲロ吐きそう。
――――二メートル以内の生魔王さんがカッコよすぎて、ヤバい!! このままだと、鼻血出して気絶しそう。
この瞬間、二人の意思は完璧なまでに一致した。
『次の一言で、ピクニックへ誘うんだ!!』
そう決意した二人は、さながら居合の達人たちが、相手の隙を窺うかのように見つめ合う。
――――俺が切り出すか、それとも切り出されたところを狙うか・・・・・・ん?
――――私から誘う? でも、どちらかと言えば、魔王さんに誘われたい。どうしよう・・・・・・あれ?
ほんの数秒だが、魔王と全能神は、互いに見つめ合っていることに気づいてしまった。
すると、二人の顔は見る見るうちに真っ赤に染まっていき、互いに許容限界を向かえてしまう。
瞬時に、全能神は自身の鼻に異常なまでの熱を感じ、すぐさま頭を下げると、早口で言葉を捲し立てた。
「す、すみません。少し夜風に当たりすぎたようで、今晩はこの辺りでお暇させていただきます」
「じ、自分も少しばかり、肌寒くなってきたところなんで・・・・・・お気になさらず」
魔王も限界と言わんばかりに、言葉を捲し立てていくが、次第にその顔を真っ青に染まっていく。
「で、では、魔王さん、おやすみなさい」
「ぜ、全能神さんも・・・・・・おやすみ」
別れを告げた二人は、互いに背を向け合うと、目にも止まらぬ速度でその場から離脱した。
その日、魔王と全能神の寝室からは、不気味な叫び声が聞こえてきたという。
「ま、魔王さんと、目が合って、目が、目が!! グへへへへへ」
「全能神さんと、目が合ったぞぉぉぉ!! やっふぅぅぅぅ!!」
二人は本来の目的が失敗したことも忘れ、目が合ったことを思い出しては、一晩中、ベットの上にて狂喜乱舞に身を任せた。
読んで頂きありがとうございます。一応、まだまだ続きますが次回の投稿も遅いかもです。