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祝いの席で、魔王と全能神は話したい!! そして、あわよくばピクニックへ!! 前編!!

お久しぶりです。最近は、クロスウィルに掛かりっきりで掛けていませんでした。待ってくださっていた読者様、大変長らくお待たせしました。久々の息抜き小説を投稿いたします。

のほほんと温かい目で見ていただけると、幸いです。 それでは、本編をどうぞ!

 クルシエム王国の国境防衛戦にて、見事勝利を収めた連合軍は今、クルシエム王国にて、国王主催の感謝パーティーを楽しんでいた。ある、二人の転生者を除いて――――。


 どうも、一周間前の防衛戦にて、全能神さんをピクニックへ誘えなかった、自称魔王です。

 俺は今、猛烈にやる気が起きない、いわゆる無気力状態になっている。部下に連れられるまま、あれよあれよと、パーティー会場へとやって来たが――――ハッキリ言って苦手なんだよな、この空気。

 もう、俺の場違い感ときたら、魔王なのに空気になれるレベルまで達してるからね。ふっふっふっふっ、笑いたきゃ笑えよォォォォ!!


 そうだよ! ただコミュ障を拗らせただけの、チキンハートな魔王だから、パーティーなんて全然楽しめないんだよ!! 文句あんのか!? 俺だってあるわ!!

 何で、コミュ力上昇のスキルって存在しないの? カリスマ性とかのスキルって、普通に考えて必要だろうが!! なんで、俺のスキルには『魔王力』とか、意味わかんねぇスキルはあるのに、カリスマ性はねぇんだ!!


「あの神、次に会ったらぶっ殺す」


 ボソッと呟いた言葉は、誰にも聞こえてはおらず――――というよりも、魔王に近づく者好きな人間など存在しないというのが、事実である。

 さっさと終わればいいのに、などと魔王が考えていると――――腕に翼を生やしたハーピィーの少女が、魔王へと声を掛けた。


「ま、魔王様!」


「ん? あぁ、ユリスのところの妹か」


 魔王に覚えてもらっていたことが嬉しいのか、ハーピィ―の少女は顔を赤らめている。


「その、セリス・ヴァンフィールです。魔王様! 今日はお疲れさまでした!!」


 眩しい笑顔で、魔王へと労いの言葉を掛けるセリスに、魔王は優しく微笑みかけた。

 その瞬間――――凄まじい悪寒が、背筋を一気に駆け抜けていくが、魔王は気にも留めずに、セリスへと言葉を掛ける。


「お、おう・・・・・・ありがとう。セリス、今日はよく戦ってくれた。魔王として、今一度礼を言う」


「そ、そんな! 恐れ多いです。その・・・・・・魔王様の、お役に立てたなら、嬉しいです」


 その言葉を聞き、思わず涙ぐむセリス――――その涙を、魔王は優しく拭ってやると、頭を優しく撫で始めた。その慈愛に満ちた魔王の表情に、会場に居る女魔族達は、魔王へと視線が釘付けになってしまう。


 何故、魔王がこんなにもコミュ力が高いかと言うと――――。

 それは、魔王スキルに存在する、『魔王力』というスキルによる副作用にも似た効果のせいだ。


『魔王力』――――このスキルは、基本的に自動発動するものだったり、常時発動中のスキルの複合名称である。その中に含まれる、代表的なスキルは、『湧き上がる無限の魔力』、『自動修復機能』、『完全耐性』などに加え、『カリス魔性』というスキルが存在している。


 この『カリス魔性』、魔物や魔族だけに特化した、最強のコミュニケーション能力だった。魔族を前にすれば、スラスラと言葉が浮かび、魔王として振舞えば、超モテモテの魔族ハーレムを築くことさえ容易い、超絶コミュニケーションスキル――――にもかかわらず、魔王が惚れれしまったのは全能神。もはや、スキル外もいいところである。


「不甲斐ない魔王なばかりに、君たちには何時も助けられてばかりだ」


「ご謙遜を、お姉ちゃんが言ってました。魔王様が本気になれば、この世界を支配する事さえ出来ると! でも、それをやらないのは、慈悲深い魔王様が、多種族との共存を望んでいるからだと、お聞きしております」


 あの変態ハーピィ-め、妹に何てこと吹き込んでやがる! 何かキラキラした眼差しを向けられているんだが!? 止めて! 俺はそんな素晴らしい存在じゃないんだ!! 俺は所詮、全能神さんに話しかける事さえままならない、チキンな魔王なんだ・・・・・・。


 突如、落ち込んだ様子を見せる魔王に、セリスは心配そうな表情を浮かべて、意を決したように魔王の頭を撫で始めた。


「・・・・・・せ、セリス? な、何をしてるんだ?」


「ご、ごめんなさい。魔王様、急に元気がなくなったので、少しでもお疲れがとれればと思い――――」


 怯えたように瞳を潤ませ、魔王を見つめるセリスに、不覚にも、魔王の胸はキュンとしてしまう。だが、その瞬間、魔王の背筋に凄まじい悪寒が走る。


「ッッッ!? セ、セリス・・・・・・もう大丈夫だ。ありがとう」


 慌ててセリスを止めると、その異様な悪寒は収まるが、魔王は一瞬、本気で死ぬかと思った。その悪寒の正体が何なのか分からないが、急いでこの場を撤退することに決める。


「それでは、セリスよ。我は、少し席を外すが、折角のパーティーなんだ、楽しんでいくのだぞ」


「はい! 魔王様も、お体にはお気をつけてください!」


 元気よく返事をするセリスに見送られ、魔王はパーティー会場から抜け出すことに成功した。



 一方、その頃――――。


 人間の貴族や、国王に話しかけられていた全能神は、いつもの様に遠隔透視魔法を使い、会場に居るであろう魔王を観察していた。

 そして、魔王の部下であろう少女が魔王へと話しかけたかと思うと、魔王はその少女へと優しく微笑みかけている。


「・・・・・・」


 全能神は、今まで感じたことも無いくらいの黒い感情に、思わず、魔王へ向かって射るような視線を向けてしまう。だが、魔王は気にした様子も見せずに、その少女と会話を続けている。


「・・・・・・ずるい」


「全能神様、何かおっしゃいましたか?」


 もはや、全能神には目の前で自分へ話しかける貴族などよりも、自分も魔王と話したいという欲望に駆られていた。


 ――――魔王さん、部下に慕われている姿も素敵ですが、周りの女性魔族から向けられる視線は不愉快です! なっ!? あの少女、魔王さんの頭をッ!? 狡い狡すぎる!! 私だって、魔王さんの頭なでなでしたり、膝枕してあげたり、寝るまで隣でお腹ポンポンしてあげたいのに!!


 でも、このパーティーで魔王さんをピクニックに誘う事さえ出来れば、私にだってチャンスがある!! そのために、わざわざ来たくも無いパーティーにまで来たんだから!! 何時もなら、家でまったり魔王さんのフォトコレクションを網羅しているところを、わざわざ人の多いパーティー会場まで足を運んだのは、全ては魔王さんをピクニックへ誘うため――――だったんだけど、魔王さんの正装がカッコよすぎて! 全く近づけないよォォォォ!


 あんなん反則だよ!! いつもの戦闘服も良いけど、スーツ姿もカッコいい!! 脳内に永久保存は既に並列思考で行ってるから大丈夫として、問題は話しかけられないという事だよ! 近づこうとしても、魔王さんの半径五メートル以内に入ると、思わず気を失ってしまう。だけど、流石にパーティー会場で五メートル圏外から話しかけるのは、あまりにも変!! つまり、私が近づけない事にはピクニックに誘うなど夢のまた夢なんだ!


 あれ? 魔王さんが外に出た、何でだろう? これは、最大のチャンス到来だね!!


「ぜ、全能神様? 体調が優れないようでしたら、少し外の空気でも吸って来られるのがよいかと」


 汚らわしい貴族にしてはナイス判断だよ! お言葉に甘えて、いざ魔王さんのところへ!!


「そうですね。では、お言葉に甘えて少し席を外しますね」


「はい! ごゆっくりしてきてください」


 やったね、完璧だよ!! 流石は全能神だね! 私のスキル『善生物対応コミュニケーション能力』に掛かれば貴族の豚どもだろうとチョチョイのチョイで頬を赤らめて頭を垂れるのだよ!


 でもさ、魔王さんにも対応しててほしかった! 何で、『全生物』じゃなくて『善生物』なの!? 別に、完全対応のコミュニケーション能力で良かったよね? だって私、全能神なんだよ? 今考えてもおかしくない!?


「次、神様にあったら一発殴らせてもらお」


 そんな想いを胸に、全能神は魔王が出ていった場所へと速歩で向かって行く。歩きながらも、全能神は魔王へと話かける方法を数百パターンの立案と検証を繰り返し、最も自然に話しかけられ、最も自然にピクニックへ誘う方法を魔王の元へ辿り着く数秒前まで行うのだった。

この度は、最強魔王と全能神が恋人だっていいじゃない!!を読んで頂き誠にありがとうございます。次回の更新がいつになるか分かりませんが、皆さんも息抜き程度に読んで頂けると嬉しい限りです。

それでは、また今度!

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クロスウィル / 渇望のディエンドもよろしくお願いします。
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