彼と彼女は、チートな能力よりもコミュ力が欲しい
この度、ラブコメにチャレンジしようと思い書いてみました。
基本は、クロスウィルの投稿を優先させていただきます。
彼の名は、祠堂黒夜。
オタクで、引きこもりで、ニートだった彼は、ひょんなことから異世界へと転生する。
転生時の特典に、『超絶怒涛の最強魔王セット』を選んだ彼は――――特典通りに魔界を統べる大魔王へと成りあがり人々に恐怖の対象として見られていた。
そんな彼を慕う部下たちも多く、充実した魔王ライフを黒夜は楽しんでいた。
だが、ある日を境に魔王である彼は恋に落ちてしまう。
たまたま戦場で出会った少女に、正しく一目惚れしてしまった黒夜。
その日から、仕事が終わる度に彼女の姿を見ようと彼女の居る国へと通い始めた。
日課の様に、黒夜は毎日街はずれの丘の上から彼女の姿を眺める。
だが、そこで思わぬ事実を知ってしまう。
彼女は、ただの少女ではなく全能神と呼ばれ人々に崇められる超凄い人だった。
そして、黒夜は現実に打ちひしがれてしまう。
自分は人類に敵対視される魔族の王で、愛しの彼女は人々の崇拝する女神のような存在。
「もう無理だ・・・・・・可能性など皆無だ」
絶望に打ちひしがれ、その場で思わず膝をつく魔王。
あまりの絶望に、意気消沈の様子で街を出ようとする黒夜に声を掛ける存在があった。
「魔王さん。こんにちは」
声を掛けてきたのは、先程まで眺めていた全能神その人だった。
黒夜は、あまりに急な展開に固まってしまう。
「あ、あぁ。こんにちは――――じゃなくて、何故ここが?」
「え、えーっと・・・・・・す、少し散歩に」
全能神の彼女、実は黒夜と同じく転生者なのだ。
彼女の名は、天野夕夏。
これまた黒夜と同じく、オタクで、引きニートだった、いわゆる残念美少女である。
ひょんなことから転生することになった彼女は、特典の『完全無欠の全能神セット』を選んでこの世界に転生した。
そして、たまたま目にした彼に一目惚れしてしまう。
だが、自身が全能神という事もあり叶わぬ恋と諦めていたが――――最近、街から百キロほど離れた丘の方から視線を感じていた全能神の夕夏。
その正体を確かめるため千里眼の魔法を展開させた夕夏は、衝撃の光景を見た。
何と、魔王が一人で丘の上にいたのだ。
その日から、夕夏はこの時間帯を毎日楽しみにしていた。
魔王は決まって同じ時間にやって来ては、同じ時間に帰っていく。
その時間帯を見計らって、仕事をしながらも魔王の日常風景を観察し続けていた。
つまり、散歩というのは嘘である。
「さ、散歩ですか」
(何て、美しいんだ! 目の前で見ると、これほどまでッ!! ああ・・・・・・俺、明日死んでもいいや)
黒夜は、あまりの美しさに浄化されるような気持ちを覚える。
(あの、美しい白銀の髪。きめ細かく、透き通るような肌。そして、世の男性の理想ともいえる芸術的なプロポーション)
黒夜は、今にも感動で気絶しそうな自意識を無理やり抑え込む。
そして、次の瞬間――――。
「そ、そういう、魔王さんは・・・・・・ど、どうしてここに?」
上目使いと、甘えるような声で放たれたその質問に黒夜の魂は肉体を離れた。
脳は、目の前の光景を永久保存しようと凄まじい速度で記憶する。
(魔王スキル自動発動、『完全時間記憶』)
魔王特典により得た、黒夜の超絶スキルの一つ。
この能力は、その記憶した時間を脳内で完全再現する事が出来る。
能力の使用者は、まるで体験してるかの如く映像を思い出せるのが特徴だ。
我に返った黒夜は、怪しまれたかと思い焦ってしまう。
今思えば、黒夜の行動は現代で言うストーカー行為にも等しい。
この場を乗り切るために選んだ、黒夜は悩みに悩みぬいた結果、意を決したように口を開く。
「・・・・・・ぴ、ピクニックに」
その瞬間、場の空気が凍った気がした。
黒夜は、引かれたと落ち込んだ様子を見せるが――――。
その実、目の前の全能神は・・・。
(可愛いぃぃぃぃ!! 魔王さん、ピクニックが好きなんだ!! 今度から一緒にピクニックとか・・・・・・えへへへ。ハッ! 急いで、忘れない様にしないと! 全能神スキル発動、『無限記憶』)
無限記憶、このスキルは一度見たものや聞いたもの、その全てを永遠に忘れることが無く覚えていらるという能力。
記憶しながらも、頬を薄っすらと紅く染め、夕夏は妄想の世界にへと旅立っている。
暫くの間、二人の間に会話は無く時間だけが過ぎていった。
「「・・・・・・」」
そして無言のまま、何と――――二時間が経過。
((気まずい!!))
「自分は、そろそろ帰ります」
戦力的撤退、魔王黒夜は現状を打破する方法が思いつかず逃げ出すことを選択した。
だが、それを全能神こと夕夏は良しとしない。
「ま、待ってください!」
「・・・・・・何だ」
魔王の腕を掴み、引き留める夕夏に黒夜は背を向けたまま尋ねる。
手から伝わる熱が、黒夜の心臓を酷く高鳴らせた。
「あ、明日は・・・・・・私も一緒にピクニックしてもいいですか?」
その言葉を境に、黒夜の記憶は無く。
気が付けば、黒夜は魔王城の自室へと帰ってきており、布団に包まり静かに悶えまくっていた。
同じく夕夏も、自室にて魔王の手のぬくもりを思い出しながら酷く悶えまくっていた。
読んで頂きありがとうございました。
これからも、ゆっくりと更新していきたいと思います。